「これからおいおい説明はします」
『うん』
「さぁ、行きましょう」
『裁判って怖い??』
「罪を犯してない限り怖くはありませんよ」
「大抵、天国に来るのは善人ですから」
「その最終チェック的な感じですね」
『ふーん…』
私は善人ってことか
まぁ、悪さなんてしたことないから当たり前か
〜裁判所〜
『なんか眩しいね』
「最高神様がいらっしゃいますからね」
『最高神ってだれ??』
「ご存知ないですか?!」
『え、うん』
「最高神とは、国産みの伊邪那美命様や、天照大御神様など、国づくりに携わった方々ですよ?!」
『私、ろくに学校とか行けてないから……』
「コホン…それは失礼」
「うう"ん!!」
ビクッ
「次の者!!参れ!!」
『は、はい!!』
「行きましょうか」
ギィィィー
重そうな扉が開く
【あら、随分お若いですね…】
【若くして亡くなってしまったのか…】
【お可哀想に…】
「そっ、それでは皆様、御手元の資料をご覧下さい」
「蒼梛藍華。享年17歳。死因:線路への転落死」
「彼女は持病があり、幼い頃から病院に通っておりました。そのため、なかなか思うように生きることが出来なかったようです」
【まぁ……】
「彼女は、自由に生きることを望んでいます」
「出来ることなら家族と3人で仲良く暮らしたい」
「これが彼女の願いです」
【…藍華さん…で合ってます??】
『は、はい!!』
【スッ】
いきなり手が伸びてきた
ビクッ
【お可哀想に…】
【あなたには今、2つの選択肢があります】
『選択肢……??』
【1つは、今までの記憶を全て消して、生まれ変わる】
【もう1つは、記憶はそのままで天国で暮らす】
【どちらがいいでしょうか】
『……仮に生まれ変わるとして、実の両親の元へは行けないってことですよね??』
【そうなりますね】
『……』
【我々としては、自由に暮らせる天国の方がいいと思います】
『天国で暮らしてて、家族に会いに行けますか??』
【月に1度でしたら】
【それは規定なので、我々で変えることはできません】
『…そう……ですか…』
新たに生きることなんてできない
私はあの両親あってこその私だ
記憶を…絶やしたくない
現世の方が苦しかった
だったら
私の選択は
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!