前の話
一覧へ
次の話

第25話

聖ルート『立場逆転!?』
3,867
2021/02/03 09:00
宝来 聖
宝来 聖
あなた~
あなた

わー!
聖くん、ここ大学!


大学構内を歩いていると、急に後ろから抱きつかれた。


聖くんは一年遅れて、私と同じ大学に進学してきたのだけれど、入学以降ずっとこの調子だ。
女友達
女友達
相変わらずラブラブだねぇ
女友達
女友達
いっそ清々しくなってくるわ
あなた

ごめん……


大学に入ってからできた女友達にとっても、すっかり定番の場面になってしまった。
あなた

聖くん、眠いの?

宝来 聖
宝来 聖
……うん。
もう帰りたい
あなた

よく単位落とさずに、高校卒業できたね……


三年前は小柄で、私と変わらない身長だったのに、今では頭ひとつ分も高いし、体格もがっちりしてきた。


その上でこの性格なので、以前よりも女子たちにもてはやされるようになっている。


それだけが、正直に言うと唯一の不安点だった。



***



私と聖くんは、結婚後すぐに一緒に住み始めた。
宝来 聖
宝来 聖
結婚したんだし、一緒に住もう?

そう首を傾げて言われれば、私はよく考えずに頷いてしまい、流されるままに同棲が始まったのだ。
あなた

ただいまー。
聖くん、起きてる?


先に帰った聖くんを探すと、ソファの上で本を読みながらくつろいでいた。


最近、家ではなぜか目が冴えるようで、こうして起きていることが多い。
あなた

眠らなかったの?

宝来 聖
宝来 聖
うん。
あなたの方が疲れてるだろうから、僕の膝の上、おいで
あなた

……う。
じゃあ、お言葉に甘えて


今は、なぜか私が聖くんに膝枕をしてもらうことが増え、立場がやや逆転している。


一度やってみたら、ハマってしまったらしい。


そういうところも、やっぱり聖くんは不思議で変わっていると思う。
あなた

ふふ、くすぐったい……


髪を撫でられて笑うと、聖くんは満足そうに顔を近づけてくる。


びっくりして目を閉じれば、額に唇の感触が当たった。
宝来 聖
宝来 聖
……ふ、期待した?
あなた

ち、ちがっ……

宝来 聖
宝来 聖
でも、今のはキス待ちの顔だった。
かわいい
あなた

わーわー!
忘れて、もう!

宝来 聖
宝来 聖
僕のことで何か不満があるんでしょ?
顔に出てる

貘の力故か、察するのは聖くんの特技だ。


私は隠しきれず、大学の女の子たちに嫉妬していることを話した。
宝来 聖
宝来 聖
えー? 嫉妬してるの?
あなた、かわいい~
あなた

もう、こっちは真剣に悩んでるのに!
早々と私と結婚しちゃって、聖くんが後悔するかもって……

宝来 聖
宝来 聖
何言ってるの?
一番好きな子と結婚できたのに、僕が他の子になびくわけないじゃん
あなた

へっ


そんな甘い言葉をささやかれたら、もうダメだ。


完全に、骨抜きにされてしまっている。


私は両手で顔を覆った。
あなた

どこでそんな言葉を覚えてくるの……

宝来 聖
宝来 聖
知らなーい。
思ったことを言ってるだけだもん

これから何十年、何百年と続いていく関係を、ちょっと不安に思っていたのは私だけだったらしい。
宝来 聖
宝来 聖
ね、顔見せて

ねだられるように言われたら、手を外さないわけにはいかない。


言うとおりにすると、軽いキスが唇に落ちてきた。


【聖ルート・完】

プリ小説オーディオドラマ