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第16話

八咫烏のあやかし
土産物店の手伝いが終わった日の夜。


夕食前に、一時間だけ時間が欲しいと、渉兄ちゃんに家の外まで呼び出された。


お兄ちゃんからも、この状況をかんがみて許可が下りているらしい。
廣内 渉
廣内 渉
おー、あなた。
急に悪いな
あなた

ううん。
全然ふたりで話ができなかったもんね

廣内 渉
廣内 渉
ドライブでもしようと思うけど、いい?
あなた

うん。
でも、車は……?


やはり元々、ドライブに連れて行きたかったらしい。


でも、彼は車を持ってきていない。


どういうことだろうと思っていると、渉兄ちゃんは突然背中から大きな羽を出した。


八咫烏の漆黒の羽だ。
あなた

わっ! びっくりした!

廣内 渉
廣内 渉
あなたって、高いところ大丈夫だっけ?
あなた

大丈夫だけど。
あ、もしかしてドライブって……きゃっ!


今度は急に横抱きにされ、慌てて渉兄ちゃんの首にしがみついた。
廣内 渉
廣内 渉
心配すんなだって。
絶対に落とさねえから

不敵な笑みを浮かべる渉兄ちゃんの顔が近くにあって、ドキッとした。


それも束の間で、彼は音を立てて羽を動かし、ゆっくりと空中に浮かび上がる。


そして、そのまま空中を飛び始めた。


他の烏たちが驚いて、私たちを避けていく。
あなた

わー! わー!
なんかぞわぞわする……!

廣内 渉
廣内 渉
ドライブの代わりに空中散歩もいいかと思ったんだが
あなた

それ、先に言って……!

廣内 渉
廣内 渉
そんなに怖いなら降りるか?

さっきまで笑っていた渉兄ちゃんも、私の反応を見て真顔になった。
あなた

(……あ。
きっと、私を喜ばせようと考えてくれたんだ)


私は彼にしがみついたまま、首を横に振った。
あなた

大丈夫。
慣れるまで時間がかかりそうなだけ……

廣内 渉
廣内 渉
……そうか
あなた

ちょっと待って、どこ触ってんの!?

廣内 渉
廣内 渉
あ? しがみつかれたら触りたくもなるだろ
あなた

開き直らないでー!


渉兄ちゃんは、歯を見せて笑った。


あまりにも楽しそうな表情を見せるものだから、それ以上怒れなくなってしまう。


しばらくそのまま空中をゆっくりと移動していると、感覚が慣れてきた。


下を見る余裕も出てきて、田舎ならではの静かで控えめな夜景が見えてくる。


家や商店の灯りがあちこちにあり、海はさざ波を立て、風が心地いい。
あなた

これって誰かに見つからないの?

廣内 渉
廣内 渉
幸い今日は半月だし、大丈夫だろ。
今日はあなたのために、特別だ
あなた

……あ、ありがとう。
って、こら!
どさくさに紛れて触ってる!

廣内 渉
廣内 渉
あはは

一時間のうちに空の散歩を終えて、自宅へと戻ってくる。


まだ足が地面に着いたような感覚がしなくて、ふわふわしていた。
廣内 渉
廣内 渉
あなた。
これは、手伝いを頑張ってくれた礼だ
あなた

え?


別れ際に、渉兄ちゃんから黒い羽根のついたストラップをもらった。
あなた

これってもしかして……

廣内 渉
廣内 渉
俺の背中の羽だ。
持ってると魔除けになる

魔除けを渡す意味は、白夜くんから聞いている。


それを言わない渉兄ちゃんは、「あー」とか「うー」とか言いながら、目を泳がせていた。
廣内 渉
廣内 渉
いつか、そういうのじゃなくて、俺が一生守ってやるって言えたらいいんだけどな……
あなた

へっ?

廣内 渉
廣内 渉
あー……やっぱ格好つかねえわ。
調子狂う……
あなた

うん。
渉兄ちゃんはそのままでいてね。
スケベは直してほしいけど

廣内 渉
廣内 渉
こんにゃろ。
俺様のアイデンティティーを取るな
あなた

あはは。
これ、ありがとね


渉兄ちゃんの思いは、確かに受け取った。


おばあさんの言葉を思い出すと、ちょっと照れくさくなるけれど。


いつかもし、彼を選ぶことになったら――その時は同じだけの思いを返そうと誓った。


【第17話へ続く】