待ちに待った週末。
大学で講義を受けたら、アルバイトを終えて、アパートへと急ぐ。
帰り着くと、駐車場には渉さんの車が既に停まっていた。
わくわくしながら、自室の扉の鍵を開けようとすると、先に中から開けられる。
渉さんは大学を卒業後、村の役場に勤めている。
村の人たちからも頼りにされているようで、特に商店街の人々からは喜ばれたと聞いた。
一方で、私は大学に通うため、村を離れて一人暮らし。
新婚だというのに、一緒に住めないのは残念だけれど、毎週末にこうして渉さんが会いに来てくれる。
だから、寂しくはない。
学生結婚はやっぱり珍しいようで、否定的な意見がなかったわけではない。
でも、渉さんと結婚したことは間違ってないと、胸を張って言える。
だから、堂々としていればいいのだ。
渉さんは料理も上手だと、こうやって過ごすようになってから初めて知った。
格好いいし、力持ちだし、頼りになるし、自慢の旦那様だ。
テーブルに料理を並べ、向き合って食べ始める。
みんなが、兄の言うことにきちんと従うことは、なんとなく気付いていた。
それだけ、御堂家の力が強いということらしい。
結婚してからは、渉さんのくっつきたがりは加速した。
今までもスケベなところは多分にあったけれど、それ以上に私にちょっかいを出しては、よく怒られている。
惚れた弱みなのか、嬉しそうに笑われるともう反論ができない。
空中散歩は、今や私たちの大事な時間となった。
幸せな日々が、これからずっと続きますように。
【渉ルート・完】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。