『おっと、大丈夫？』

だれ…？
男の声が聞こえたと思ったら銃声が続けて数回聞こえた。そして今はこの男が部屋のドアを壊して入ってきた。
私がそれに驚いてよろけたところを支えてくれた。

『ごめんね、突然だけど君は今命を狙われてる。だから俺と一緒に外へ逃げよう』

「そ、と…」

『そう。ここにいたら死ぬけど、来る？』

そう言って背が高く顔の整った男が私に向かって手を差し出してくる。これはどうすればいい…？

『え、死にたいの？』

私が中々彼の手を握らず考えていると、少し焦ったように聞いてきた。

「違くて、外に出たことがないから…」
『あぁ、それは心配ないよ。すぐに慣れる。ほら、おいで？』

一か八か。
外へ出られるということもあって、私はこの人の手に自分の手を重ねた。
外に出たい。それだけの気持ちで。

「うっ…」

久しぶりに部屋を出て慣れていない私に合わせて彼は歩いてくれる。
生臭い血の匂いが家中を駆け巡っている。そして、数人の仮面をつけた人の死体。
あともう1人、女の人が倒れていた。

「桜、さん」

そして手を引かれたまま1階へ上がる。初めて階段を上がって、外の世界が少し窓から見える。不思議な感覚。
ただ、周りに広がる光景が異常だということは分かる。

『これから、このドアの外に出る。そしたら黒い車が止まってるから走って乗ってね』

耳に手を当てて『ヒョン、今から外出るんで車のドアお願いしますね』と話してから、私の方を見た。

『行くよ________________________










走って！！』

軽く背中を押されて、開けてくれたドアの外へ出る。
数年ぶりに外の自然の光に当たった。少し肌寒いけどそんなことは言っていられない。
眩しい光に目を一生懸命開きながら走った。


小道を挟んだ向こうに黒い車が止まっていて、急いでいる男に押し込まれるようにして中へ入った。

『早かったな』


運転席に座る人がそう言った。


『まぁ、急がないとまた失敗したらユンギヒョンに殺される』
『その名前ここで出すなってあれほど言ったのに…』
『あ、すいません』


そう話している間にも、物凄い速さで車は進んでいる。


「あの、名前、は？」
『あぁ、俺はV！本名は今言えなくて…ごめんね。この運転してる人はRM！』
「ぶい、さんとあーるえむさん？」
『そうそう！』
「今はどこに…」
『アジトに向かってる。多分20分かかるから寝てな』
『これ食べたらいいよ』

差し出されたのは紙に包まれたもの。


『飴だよ。睡眠薬入りなだけなんだけど… いちごみるくの味だけど食べれるかな？』

運転しながら私の方を少し気にかけてくれる。


「食べたことはないけど…」


飴は口の中で無くなるまで舐める物だということは知っている。


『美味しいよ！俺は好き！』


Vさんが飴をぱくっと口に入れて、おいひ〜と言いながら腕を組んで目を瞑った。


『疲れたぁ〜』
「あ、あの？」


Vさんは私の肩に頭を乗せて寝てしまったらしい。


「いただきます、」


私も同じように薄いピンク色の飴を口に含んで瞼を閉じた。
いちごみるく。
初めて口にした飴はものすごく甘かった。

『あなたちゃん、おはよ。飛行機に乗り換えるからまた走ってもらうけど…大丈夫？』
「はい」
口の中がまだ甘い。
唾液は寝ている間にあまりでないのだろうか。まだ口の中にあるものは無くなっていない。


『よーし、じゃあ走れ！』

飛行機というものの、階段を駆け上がって中に入った。


『お、この子があなたちゃんか。俺はボムギュ。よろしくね〜』


操縦席から声が飛んできた。
また違う人だ。


『じゃあさっきより時間かかるから、また寝よう！』
「は、はい」


Vさんはまだ寝たりないらしく数分で眠りについてしまった。
走った時に少し見えた夜景。
暗いけど所々きらきら光っていて、とても綺麗だった。またいつか見たいな、と思いながら少しして私は睡魔に襲われた。