今日の天気は晴れ。朝焼けが綺麗だ。
私はマサイの寝ている部屋に行き彼を起こした。
痣が増えていないことを確認しながら手を差し出す。
上を見上げると、マサイは驚いた顔になった。
慌ててカメラを構えてシャッターを切る。
久しぶりに出た外で、久しぶりに見たカメラを構えるマサイ。
何枚も撮って、何回も確認している。
すると、何か思い出したのか急にこちらを振り返った。
言われた通りの場所に立って、笑っていると
一瞬マサイの表情が曇った気がした。
『そんなことねぇよ』と
私に向けてシャッターを切った。
マサイに写真を撮ってもらうのは初めてではなかった。
私がフィッシャーズとしてお手伝いをした時
記念に、ってマサイが照れる私を撮ったのだ。
あの頃はまだレインちゃんなんて呼ばれてたっけ。
そんな思い出が頭の中で流れていく。
ふと気がつくと
暖かいものが頬を伝わっていった。
首を横に振り、伝えようと声を出そうとするも
泣いててよく分からない
もう泣かないと決めたはずの眼から
涙が溢れ落ちて止まらない。
それは、時間がもう残り少ないことも表されているのかな
私に残された時間の少なさと、マサイの暖かさに
どうにもできない自分が嫌で。嫌いで。
もう、そんなことは気づいていたはずなのに。
思い出すのは楽しい。とわかっていたあの頃。
皆を起こして一緒にご飯を食べることから
私の生活はスタートして。
晩御飯を皆で決めて、会話して。
私の声が届いていたあの頃を。
ずっとずっと思い出して、思い出しては泣いた。
でも、もう思い出すのはやめようと思ったのは
自分に時間が無いと悟ってしまったからだ。
今は自分より、7人が先だと決めたから。
彼らには未来があるんだ。
泣いている場合じゃない。
マサイから離れた。
そっか。と力なく笑う。
気分が下がればまた痣が増えると思い
笑ってマサイの手を引く。
マサイが笑えば痣は消える。
つまりマサイが幸せであれば、痣は消えるんだ。
確信は、積もり事実になった。
あとはそれをうまく伝えるだけ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。