扉を閉めて、別の扉を開ければ
ボーッと窓の外を眺めるザカ君の姿があった。
もう既に体は、ほぼ動かない状態。
感情はまだあるから希望は捨てない。
こっちを向かなくとも、気配で分かると言う。
彼なりに神経を研ぎ澄ませて身につけた術だ。
最近は言いたいことも察するようになっている。
嬉しい反面、悲しい。
ご飯を食べ終えるとザカ君の訓練に入る。
立ったり、座ったりを繰り返すことで
筋肉を球体にしない方法だ。
これをやる前は、関節ごと球体になりかけた。
そろそろ、自分で動けるぐらいに回復すると思う。
部屋を出ようとすると、レインはザカ君に止められる。
少し照れているのか、下を向いてそれでも笑って呟いた。
うん。とザカ君の力強い声を聞いて私は扉を閉めた。
ドアを閉めた直後すすり泣く声が聞こえる。
得意で自分の自慢だったダンスができなくて
何で………ッ…!!そう、あたっていた。
以前、まだダンスができた頃の話だがザカ君は
『自分からダンスを取ったら 何も無くなる。』と
遠くを見つめて呟いていた。
そんなことないよ、と励ましたが
結果的に失うことになってしまった。
それが悔しくて、悔しくて。
何もできない自分に腹が立った。
どうして自分だけ何もすることができないんだろう。と
自分を攻め続けていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。