宮城についたのは外が暗くなった頃。
バスの中でまた仁花ちゃんの枕役をしながら、外を眺めていた。ちょっとだけ、寂しいなーとか思ったり思わなかったり。
「明日は体育館に点検作業が入るので部活はお休みです」
「「「はーい」」」
明日休みか……
何しよう
ぞろぞろとみんな帰路につく。
仁花ちゃんは日向と影山の練習に付き合うらしい。私も付き合うよと言ったけど、大丈夫だよ!と言われた。私が独り暮らしだからか
気を使ってくれたらしい。
ジャージのズボンにTシャツとパーカーのまま
あ、イザ兄にパーカー返すの忘れてたな………
すん…
「へへ…イザ兄の匂い」
今のイザ兄に聞かれたら、絶対キモいって言われた。自分でも分かってるし!
はぁ……
今からご飯作るのもなー……
何かもういろいろありすぎて眠いし…
スーパーで惣菜買ってけばいっか………
欠伸をこらえながら、ぺりぺりと包装紙を外す。ブドウの棒つき飴を口に含んだ。
大丈夫かなー……あの二人。仁花ちゃんの前で喧嘩とかしないといいけど……
「っ…!あなたちゃん……!!!」
「?どしたの、仁花ちゃん」
「お願い来てっ……!!!日向と影山くんが…!」
真っ青な顔で私の腕をつかんでいる仁花ちゃんの様子からして、何が起こったのかは大体予想がつく。
仁花ちゃんに一応残ってる先輩がいたら話してきて、と言ってから体育館に走った。
「完璧だった…!!ドンピシャだった!なのに止められた!!
俺が今のままじゃ上にはもう通用しないんだ!!
体育館に近づくにつれてはっきりと聞こえる日向の声。
掴み合っていて、そりゃ慣れてない子には怖いよなと思いながら拳を握る。
「女の子泣かせてんじゃねぇぞ…!!!」
ちょっとヤバめの音がしたきが……
力入りすぎちゃった!ごめんね!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。