「おい」
仁花ちゃんと話しながら学校に帰る途中。あと、もう少しで学校…というところで、路地裏から明らかな奴が出てくる。ひっ…と怯えた声を出した仁花ちゃんを庇うように背中に隠す。
「………何?」
「お前が佐野あなただな」
「そうだけど。何か用?」
大柄な男が5人……いや、6か…路地裏からもう一人出てきた
「大人しくついてきてもらおうか?そこの女も一緒に」
「チッ……」
不味いな……
私だけならまだしも仁花ちゃんがいるから、迂闊に動けない
どうする?
仁花ちゃんを逃がすか……
幸い、学校はほぼ目線の先
少しだけでもこいつらの相手を私がすれば、逃がせる
学校にはあいつらがいるから、平気だろうし
「大人しくついていくと思う?」
「それなら無理矢理にでも連れていく」
「はぁぁ……この子には手出さないって約束する?」
「どうかな。すべてお前次第だ」
大体こう言うのは手出すから。
それと、仮にこのままついていったとして
帰ってこないことに気づいたあいつらが私たちを探して、見つけたとしても
人質が私だけならまだしも、仁花ちゃんがいると動けなくなる
やっぱり逃がすか………
「いいよ…大人しくついてく。でも待って、先に連絡だけさせてよ」
「は?」
「私の後ろにどんなのがいるか知らないことはないでしょ?少しでも遅かったら動き出す狂犬ばっか。しかも鼻がきくときた。だからさ、すぐ見つけられたくなかったら、連絡するけど?」
「チッ……今、ここでやれ」
ガラ携を取り出してメールを打つ。
打ち終わった後に、文章を見せてから送信ボタンを押す
気づかないほど馬鹿じゃないでしょ
あんだけいれば誰か一人くらいは気づく。
いや、気づかなかったら絶交だから
「仁花ちゃん…………」
「…!」
「お願い……行けって言ったら逃げて」
「……分かった」
仁花ちゃんは察しがよくて助かるよ。
「じゃ、もういいよ。はいどーぞ」
きっと手を拘束するだろうから、両手を差し出す。予想通り、近づいてきた。
「ぐぁっ……?!!」
近づいてきた男のこめかみに足を振り上げれば、綺麗に横へ飛んでいった
「行け!!!!!」
仁花ちゃんは迷わず走り出した。
「てめっ…!!」
そんな仁花ちゃんを追いかけようとした男の頭を蹴って、腹に拳をいれる。
あと4人………
「あ゛っ……?!」
バチッと言う音と首の後ろに焼けるような痛み。
それが何かを理解した頃には、地面に伏せていて、意識もほぼなかった。
意識が完全に落ちる瞬間
仁花ちゃんがかなり遠くにいるのが見えた
あれだけ離れてれば……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。