2003年8月20日
私と万次郎が産まれてから丁度14年。
毎年繰り返しやって来るその日に、私と真一郎はバイクをプレゼントすることにした。
「真一郎~これは?」
「それはそっち」
部品を見せながら簡単なことだけ手伝う。万次郎がずっと欲しがってたバブだから。まぁ、私はバイクなんてほしくないし。今まで通り誰かの後ろにのせてもらうことにする。それが一番楽だしね
「あなたは、何か欲しいのねぇの?」
「んー……飴ちゃんいっぱいくれたら満足かな」
「欲がねぇな……」
「てか、真一郎。そういうのって本人に聞いちゃダメじゃない?」
「あなたの欲しいもの誰も分かんねぇんだよ。だから、もう直に聞こうと思って」
「別に……今の生活がずっと続けば満足するし。いいよ、何もいらない」
「そんなわけにはいかないだろ」
「だから、飴買って」
「そんな数百円で終わるものかよ……」
真一郎文句ばっか煩い
飴でいいって言ってるんだから。
これも毎年繰り返される会話。万次郎は欲があるというか…あれがほしいってのが分かりやすい。それに対して私は全く分からないらしい。毎年毎年、みんな苦労してるっぽい。
「あ」
「何かほしいのあった?!」
「ガムでもいいよ」
「だから数百円…!!!」
値段は関係ないじゃん
「あなた~!マイキーの誕プレ相談してもいい!?」
「どうぞ~。今日も元気だね、カズちゃん」
ピョコピョコと跳ねてくるカズちゃんを、自分が座っている隣に座るよう促す。まぁ…嬉しそうな顔を見せること
「あなたと真一郎くんがバブあげるからー………何あげればいいと思う?」
カズちゃんは真一郎に会ったことがある。
私が真一郎のお使いをしているときに、たまたま道でばったり会って、そのまま店までついてきてくれた。良いワンコ。
そして、私たちが万次郎にバブをあげるって言ったとき、まぁそれは嬉しそうに笑った。カズちゃん万次郎大好きだな…
そんな大好きな万次郎に何をあげればいいか迷っているらしい。
「………どら焼き?」
「えー、それはパーちんがあげるって言ってた!」
「じゃあたい焼き」
「それは場地」
「抱き枕でもあげる?」
「抱き枕?何で?」
「私の身代わりとして。いまだに寝てるときたまに抱きつかれる。てか、ときどき人の布団に潜り込んでくるのやめてくんないかな……」
「………ズル…」
むすっと顔をしかめたカズちゃんに何か言った?と聞けば、首を横に振って何でもない!と言われた。
「カズちゃんがもらって嬉しいものは?」
「んー……あなた!」
「それはあげるものじゃないです。まぁ、万次郎なら何でも喜びそうだけどね」
「そうかな……?」
ヤバイ…可愛いぞこのワンコ
ちょっと不安げに上目使いをしてくるカズちゃん
可愛いが過ぎる
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。