「あなた!!」
昨日は部活がなかったから、二日ぶりの練習。清水先輩に頼まれた部活道具を運んでいる途中、後ろから声がかかる。その声は私が殴った人間のものだとすぐにわかった。
「ん?」
「一昨日はすみませんでした!!」
きっかり90度に腰を曲げる日向を見て、けらけらと笑う。
「こっちこそごめんね。強く殴りすぎたでしょ。痛くない?」
「痛くない……と言ったら、嘘になる…」
「つまり痛かったんだね。ごめんごめん…………でもさ、
女の子の前であれはダメだよ?男同士の喧嘩なんて見てる方は結構怖いんだから。あと、ちゃんと謝っておくこと」
「うっす…!!」
いい返事とにかりと笑って見せる。と、体育館の扉から鵜飼コーチが顔をだした。何やら日向に用があるらしい。
「日向はしばらく試合形式のときはBチームに入れ」
影山と日向を別のチームにさせるのか……
まぁ、きっと考えがあるんだろうけど
遠征以来、何かみんなの雰囲気が変わった気がする。
居残り練習をする人が増えた。
東峰先輩と山口はサーブ練習
西矢先輩はラインをジャンプしてからのトスをする練習
日向は鵜飼コーチのおじいちゃんの所で練習
影山は仁花ちゃんと新しいトスの練習
他の人たちは森然高校がしてたシンクロ攻撃を練習している
ただ一人、月島だけなんだよな……
まぁ、自主練とかするタイプに見えないし
「いきまーす」
清水先輩と代わって、菅原さんの頭上にボールを山なりに投げる。清水先輩は別の用事があるらしい。
山なりに上がったボールを菅原先輩がトスして………
「あー……」
田中先輩にボールが上がったけどスカッと空振り。
「ドンマイです」
「もう一本お願いしゃす!」
ぱちんと手を合わして、腰を曲げる田中先輩。
そんな簡単にできるわけないよね。
「はーい、いきまーす」
そう言ってもう一度ボールを投げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。