第62話

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2021/08/31 21:00




夕方だと言うのに太陽の日差しが無遠慮に照り付けるこの中庭で。




太陽光と同様に上目遣いをなんの遠慮もなくかましてくるこの先生。




ほんとに私の担任かな。うちのクラスメイトよりも幼く見えるのは錯覚?



ミナ
ミナ
これからは我慢せんでええんやろ?
あなた

ええ、勿論

あなた

でも、学校はやめてくださいね?ナヨン先生にバレたら今度こそですから

ミナ
ミナ
その辺は私だってわかる笑
あなた

…出会って4ヶ月って感じがしませんね

ミナ
ミナ
…確かに。初対面今年の4月やんな
あなた

私が留学に行くまで、あと一ヶ月たくさん思い出作りましょ?

ミナ
ミナ
あ...その事なんやけど、校長が2週間後に行ってって
あなた

嫌です。ていうか無理です。

あなた

それに、せっかくこんなに可愛い恋人できたのに、ほっといていける訳ないでしょう?

ミナ
ミナ
かわ…!?そ、そう言うこと言い慣れてるん?!//
あなた

先生が言われなれてないだけです。可愛いだけで真っ赤になる人初めてですよ笑

ミナ
ミナ
な…// 隠れドSってやつなんやな、あなたは!
あなた

そんなことないです〜笑






カップル成立数秒後にいちゃつきを爆発させていた私達。落ち着いて周りを見てみると、




おじいさんおばあさん、はたまたさっきまで泣いてた子供達が好奇の目を向けている。




おばあさんおじいさんたちはいいなぁ若いもんは、なんて言ってるし、女の子たちはキャーキャー言ってるし。




…なんとなくだけど、私性別間違えられてる気がする。




だって、おじいさんはともかくお見舞いに来た男性陣から少し嫉妬混じりの目を向けられてるから。




これに気づいた以上こんなにいちゃついてたら何言われるか分かったもんじゃない、と私の腕の中で落ち着いている彼女から離れる。




なんで離れるの…みたいなしゅんとした表情で見つめてくるけど、流石に公共の場だし。




そんな可愛い顔しても無駄です。いやもちろんここが家だったら離れませんけど。



あなた

先生、そろそろ戻らないとじゃないですか?明日の準備とか…

ミナ
ミナ
終わらせてきた。あなたに会うためやもん。当然やろ?
あなた

偉いですね、それなら明日のお見舞いの準備でもしてください

ミナ
ミナ
え?どういうこと?笑
あなた

今日はお開きです笑 また明日、お見舞い来てくれますよね?

ミナ
ミナ
行くに決まってるやろ?二人きりでしかいちゃつけないんやから
あなた

動機が不純過ぎますね笑

ミナ
ミナ
でもそんなとこも好きなんやろ?
あなた

好き…ではないです

ミナ
ミナ
な…じゃあさっきのはなんやったん…?
あなた

大好きです。ただ好きなだけなら告白なんてしませんよ

ミナ
ミナ
...//ほんまに高校生なん?なんて発言すんねん…笑
あなた

ほら、今日は帰りましょう?私も病室へ帰るので

ミナ
ミナ
それなら送ってくで?私、今日からあなたの、か、かの…彼女…やし//
あなた

…勝手に照れないでくださいよこっちまで暑くなってきちゃう

ミナ
ミナ
え、ええやん別に!
あなた

送ってってくれるなら早く行きましょう?先生も今日は疲れたでしょうから笑

ミナ
ミナ
うぅ…なんか、負けた気分やわ…





真っ赤な顔で私の後をついてくる彼女が愛くるしい。いや、愛くるしいでも足りないくらいのこう、わき上がってくるものがある。




ほんとに…私のものになったんだな。ものって言い方はアレだけど…やっぱり嬉しいもんは嬉しいや笑




明日もお見舞い来てくれるらしいし。今日くらいは短くても我慢しよ。


















二人で手を繋いで、エレベーターに乗り込む。




私達二人しか乗ってなかったから、ちょっとだけいたずらしてやろうとその手を恋人繋ぎに変えるとまた顔を赤くして。




からかいがいがあるなぁなんて思いながら扉を見つめていると、私の頬に触れる柔らかいそれ。




…まじか……




予想外のミナ先生の行動に、流石の私も赤くなってしまう。




何するんですかと言う意味も込めて軽く隣を睨みつけると、柔らかいそれの持ち主も真っ赤になっている。




…ほんとに可愛い。今まで見てこれなかったこう言うところをこれから私だけが見れるのか。




心臓、鍛えないと生きていけないかもな。笑



あなた

ありがとうございました、ここまでで大丈夫です

ミナ
ミナ
んー…まだ一緒にいたらあかんの?個室やろ?
あなた

私は別にいいと思いますけど…先生ほんとに仕事終わってます?

ミナ
ミナ
っえ?!お、終わってるに決まってるやろ?
あなた

だって…買い物ついてきてくれた時、ノートパソコン開いてたじゃないですか

ミナ
ミナ
…なんでそんなん覚えてんねん笑
あなた

いやぁ…まさか担任が私の寝顔の写真持ってるなんて思わないでしょう?

ミナ
ミナ
!?み、見てたん?!
あなた

あの時は便宜上見てないって言うしかなかったですし笑

ミナ
ミナ
ほんまに…// もう忘れて!お願いやから!
あなた

いやですよ。こんないいネタ他にありますか?笑

ミナ
ミナ
…こんなドS好きになった覚えないんやけどな…
あなた

私だってこんな抜けてる人を好きになるとは思いませんでしたよ

あなた

まぁ、そんなところも含めて好きになっちゃったんですけどね

ミナ
ミナ
…仕事もちょっとだけ、ほんまにちょっとだけ残ってるし、今日は帰るな?
あなた

はい笑 ありがとうございました

ミナ
ミナ
... 帰る前になんかすることあるやん?
あなた

しっかり言ってくれないと私馬鹿なので分かりません

ミナ
ミナ
...ぎゅー。ちょっとでええから...
あなた

あ、ぎゅーなんですね?

ミナ
ミナ
なんだと思ったん?笑
あなた

てっきりキスでもせがまれるのかと笑

ミナ
ミナ
…別にキスしてくれてもええよ?あなたがしたいなら、な?
あなた

先生も案外…いえ、なんでもないです笑






なんやねん、なんて呑気に笑いながら私の背中に手を回す。




そんな先生の手が優しくて、温かくて。少しだけ病院生活に不安を持っていた私の心を知らず知らずのうちに癒してくれる。




そんなことも知らずに私の鎖骨の鼻を当ててスンスンと何かの匂いを嗅いでいる先生をどうしても帰したくない。




だってせっかくいい感じなのに今ここで帰らせたらこんな雰囲気が壊れそうなんだもん。




私の病院服の匂いを嗅いでいる彼女の艶のあるサラサラの髪に鼻をくっつけて私も彼女の匂いを嗅ぐ。




多分側から見たらまじで何してるのかわからないこの光景だけど、その意味のわからない光景で幸福感が満たされている。




ふと目に入った時計の長針は、今この時間が7時であることを示している。




なんならこのまま面会時間を使い切ってここにいてほしい。けどそうしたらこの人が家で仕事を終える時間がなくなる。




否が応でも私の少し下で鎖骨に額を擦り付けてる人を帰さなきゃならない。




…明日になれば面会時間なんてなくなるし、今日くらいは我慢するか。





























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