扉を開いてただいまーと大きな声で言う
すると奥からお母さんが出てきて
遅れても言い訳できる状況に油断して
着替えに10分、荷物の準備に10分なんてやっていたら
いつの間にか部活が始まる時間
呑気な返事を返してダラダラ歩いているとスマホが震える
液晶にはナヨン先生の5文字
……連絡入れてないわ。
じゃっ!と機嫌の良さそうな声が聞こえて切れた。
怪我のこと言ってないや。まいっか
正門を入れば野球部の野太い声が聞こえてくる。
頑張ってんなぁ〜と思いながらグダグダ歩いていると、
前から軽く殺気立った人影
その人影が私を捉えると走ってこようとしたが
腕を見たからか殺気が消えて違う意味で走ってきた
……?
練習中は部室なんてほとんど使わないのに使えないことなんてあるの?
そう思ったけれど、ナヨン先生が呆れたような顔をしていたから何も聞かずにナヨン先生の後ろへついて行く
職員室に入ってパーテーションで仕切られた客室のような場所に座った
そう言ってナヨン先生が席を立つ。
と同時にパーテーションの裏から昨日の人物。
そういうと視線がこちらへ向いて私と目が合う。
会釈をするとニコッとしてすぐに目をそらされてしまった
なんかちょっと寂しいな…笑
そう思いながらもナヨン先生と話しているミナ先生を見ていると
少しばかり耳と頬が赤いことに気付いた
まだベッドのこと気にしてんのかな笑
そう言ってルンルンな足取りで歩いて行った
するとミナ先生が私の目の前に座った。
私の手を握って私の手をミナ先生の額に当てている
そう言うと元々大きい目をもっと大きくしてこっちを見てくる
やっと目合ったと思ったらまたすぐそらされる
せっかく可愛いのに。
そんな会話をしていると聞こえてきたナヨン先生の声
聞こえてすぐにミナ先生の手が離れてしまった
残念と思ってしまったのはなんでだろ…
まず手を繋ぐことの方が珍しいはずなのに
するとミナ先生が少し肩を上げてこちらを見てくる
目合うのは嬉しいけどこれはな…笑
…!?バレてる……?
そんなわけないじゃないですかと言ってミナ先生を横目で見ると…
ミナ先生も同様驚いたような顔をしてた
視線が合えば、言ってないとでもいうように首を振る
そう言って微笑むナヨン先生。
怖い人だよほんとに…笑
なんでここまで知ってんの?
あの時ナヨン先生いなかったはずだけど…
あれだけ気にしないでって言ったのに…
暗くなった雰囲気の中ミナ先生が口を開く
それから色々話しているとナヨン先生が呼ばれた
ナヨン先生は、とりあえず安静にすぐ治すこと!今日遅刻したのは許すけど次はないからね!と言って行ってしまった
さっきから喋らない私の目の前の人は大丈夫だろうか
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。