始業式の日からかれこれ1週間
特にこれと言った問題はなく
いつも通りの授業を受けて
いつも通り部活へ向かう
途中、耳に私を呼ぶ声が入った
相変わらずのでかい声に思わずため息が出る
ため息と同時に身体に大きな衝撃が
そう言ってさりげなくサナの左腕が私の右腕に絡んでくる
サナのこういうところは嫌いじゃない
いつも反応が薄いだ冷たいだなんだと言われる私に
ここまでグイグイ来てくれるのはさなくらい
女子のみんなは私を落ち着いてるとかかっこいいとか言うけど
ぶっちゃけ男子の言う通り無愛想でめんどくさいだけ
それを分かった上でこんなこと出来るさなはむしろ尊敬してる
私の同じ女子バスケで副部長を務めるももりんこと平井もも
ほぼ週一で呼び出しを食らう問題児の彼女は
バスケだけは本当に上手い。
イヒヒヒと笑う彼女が所属する部活は調理部
基本的に生春巻きばかり作っているらしい
そして翌日もしくは部活終わりに必ず私とももの所へ来て
「これ、さなからの愛情やで!受け取れ~!」
と追いかけ回して来る
体育館へ着くと後輩たちが準備をしてくれていた
手際が良くてしっかり挨拶もできて真面目に練習するし勉強も怠らない
どこかの副部長より副部長できそうな子が沢山いる
中でもあの子なんかは……
噂をすれば、かけ足で集合の合図をかけてみんなを集めてくれる
少し機嫌がいいからそう言って微笑む
そう言って走り去って行った
部室の前に着けば私よりも先に扉を開けて飛び込んでいくサナ
元気だなぁと思いつつ自分のロッカーへ荷物を放り込む
その辺をうろちょろしているサナが急に声を上げた
制服を脱いで練習着に着替える
するとまた、サナがなにやら発見したようで
うちの女子バスケ部は割と強豪で、去年も先輩が取材を受けていた覚えがある。
その後記者の人が私の所へ来て何かを聞いてきたが、
私はよくわからなくて適当に返事をした
多分その時の記事だろう
最後にバッシュの紐をキュッと縛ってドアを開く
その会話から約10分後
問題児が戻ってきた
バスケが上手いのにバスパンやらバスTやら諸々を一週間に1回は忘れてくる
バスケの練習以外もしっかりして欲しい
そんなことをしていると練習が始まる時間
センターサークルに集めて今日の目標を1人ずつ
全員の目標を聞いた所で円陣を組んで開始の合図をする
早速練習を始めよう…というところでナヨン先生が来た
こんにちは!お願いします!
と言ったところで私達は練習に戻る
ナヨン先生はさなの存在に気づいたのかさなとなにやら話している
その風景に気付いたのかモモも同じように聞いてくる
しばらく練習をしていてゲームの時間
ナヨン先生の出す練習メニューは信じられないほどきついものだが
最後にゲームを入れてくれるあたりさすが分かってるなぁと思う
始まって少し経つとみなヒートアップしてきたのかファウルギリギリの激しい戦いになっていく
そんな時だった
チェヨンからモモにボールが渡り、モモから私にボールが出される
はずだった
ディフェンスに押されたモモは体勢を崩して
パスが変な所へ飛んでしまった
不運に不運が重なったのだろうか
その先にはつい先程まではいなかったうちの担任がいた
急いで走りボールを弾く
スピードを抑えきれずに担任に衝突しそうな状態へ
この体格差だ、ぶつかれば私ではなく向こうが怪我をしてしまう
そう思いどうにか足を前に出して衝突は避けた
が、スピードは抑えきれず
前に倒れそうになって急いで壁に手をつくと
所謂壁ドンという形になってしまった
先生は俯いて何やら顔を隠している
私が汗臭かったのかもしれないと思い、急いで離れようとすると
足がもつれて後ろに倒れる
展開についていけないと言うような顔でサナとナヨン先生が駆け寄ってくる
担任が顔を隠してしゃがんでしまった
怖がらせてしまったのかだろうかと思い声をかけようとする
が名前がわからないためにかけられない…
そう言ってミナ先生の元へ
上目遣いで言ってくる
少し可愛いと思ってしまったのは
気の迷いだろうか
するとナヨン先生がアイシングを持ってきてくれた
さすが先生、動きが早くて頼りがいがある
やってもらっている時にひとつ疑問が浮かんだ
意外だった
あの先生がこんな素直にサボるとは…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。