第3話

3
4,749
2021/03/07 05:31
始業式の日からかれこれ1週間





特にこれと言った問題はなく





いつも通りの授業を受けて





いつも通り部活へ向かう





途中、耳に私を呼ぶ声が入った
サナ
サナ
あなたーーーーー!!!!!!



相変わらずのでかい声に思わずため息が出る





ため息と同時に身体に大きな衝撃が
あなた

…ねぇ、もうちょっと普通に呼び止めることは出来ないの?

サナ
サナ
なんやなんや!
愛しのさなが来てやったんやで??
もうちょっと喜んでもええやん!
そう言ってさりげなくサナの左腕が私の右腕に絡んでくる
あなた

呼んでないし痛いし

あなた

もしさなと一緒にころんで2人仲良く怪我でもしたらどうするの?

サナ
サナ
大丈夫やて!そんときはあなたが支えてくれんねやろ??
あなた

私も転ぶんだって…笑



サナのこういうところは嫌いじゃない




いつも反応が薄いだ冷たいだなんだと言われる私に




ここまでグイグイ来てくれるのはさなくらい




女子のみんなは私を落ち着いてるとかかっこいいとか言うけど





ぶっちゃけ男子の言う通り無愛想でめんどくさいだけ





それを分かった上でこんなこと出来るさなはむしろ尊敬してる
サナ
サナ
今から部活?
あなた

そう

サナ
サナ
いつも部活行く時ももりんも一緒におったのに、今日はおらんのな
あなた

先生から呼び出しくらったらしい

サナ
サナ
またなん笑笑ももりんもこりへんなぁ笑笑



私の同じ女子バスケで副部長を務めるももりんこと平井もも




ほぼ週一で呼び出しを食らう問題児の彼女は





バスケだけは本当に上手い。
あなた

さなは部活行かないの?

サナ
サナ
ん〜…今日はサボったろかなぁって






イヒヒヒと笑う彼女が所属する部活は調理部





基本的に生春巻きばかり作っているらしい





そして翌日もしくは部活終わりに必ず私とももの所へ来て






「これ、さなからの愛情やで!受け取れ~!」





と追いかけ回して来る
あなた

珍しいね、さながおサボりなんて

サナ
サナ
なんかな…顧問が変わって、新しい人になってん。
やけどね?その先生好きな人おるんか知らんねんけど、ずーっとその人の話ばっかやねん!
あなた

それまた面倒くさそうな人で

サナ
サナ
やろ!?
そんな話聞いてばっかでなんも作れへんから、今日はあなたとももりんの部活見学でもしよかな思ってん
あなた

なんでそうなったかは突っ込まないでおくけど、見て楽しいものないよ

サナ
サナ
ええのー!はよ行くで!準備せぇへんと!
あなた

なんで私より張り切ってんの笑笑




体育館へ着くと後輩たちが準備をしてくれていた





手際が良くてしっかり挨拶もできて真面目に練習するし勉強も怠らない





どこかの副部長より副部長できそうな子が沢山いる






中でもあの子なんかは……






噂をすれば、かけ足で集合の合図をかけてみんなを集めてくれる
チェヨン
チェヨン
あなた先輩、こんにちは!
あなた

こんにちは

あなた

いつも準備してくれてありがとね?

少し機嫌がいいからそう言って微笑む

チェヨン
チェヨン
い、いえ、準備は速い方がいいと……//
あなた

……?大丈夫?

チェヨン
チェヨン
だ、大丈夫です!
失礼します!



そう言って走り去って行った
サナ
サナ
……あなたって罪な女やなぁ…
あなた

何がよ笑

あなた

とりあえず私着替えてくるから、その辺にイス出して座ってていいよ

サナ
サナ
ん〜……サナも行く!
あなた

え、どこに?

サナ
サナ
あなたと一緒に着替え行く〜!
あなた

変態か笑

サナ
サナ
ええやん!部室とか見てみたいんやもん!
あなた

見て楽しいものないけど…まぁ。いいよ

サナ
サナ
やったぁ〜!




部室の前に着けば私よりも先に扉を開けて飛び込んでいくサナ






元気だなぁと思いつつ自分のロッカーへ荷物を放り込む





その辺をうろちょろしているサナが急に声を上げた
サナ
サナ
あなた!あなた!
これ、ナヨン先生やない?!
あなた

ん、そうだよ
ナヨン先生、うちのOBだったみたい



制服を脱いで練習着に着替える





するとまた、サナがなにやら発見したようで
サナ
サナ
あなた!これ、あなたやんな!?
サナ
サナ
なんで雑誌載ってるん!?
あなた

あー、それ?それ去年のウィンターカップのやつ

あなた

なんか載ってた



うちの女子バスケ部は割と強豪で、去年も先輩が取材を受けていた覚えがある。





その後記者の人が私の所へ来て何かを聞いてきたが、





私はよくわからなくて適当に返事をした






多分その時の記事だろう
サナ
サナ
雑誌でもかっこええなぁあなたは
あなた

お世辞は良くないよ

最後にバッシュの紐をキュッと縛ってドアを開く
あなた

終わったから行こ

あなた

バレないように上のキャットウォークで見たら?

サナ
サナ
ん〜……あなたを近くで見たいから下におる!
あなた

何それ笑
じゃあイス出しとくから座ってて

サナ
サナ
ありがと!
その会話から約10分後





問題児が戻ってきた
モモ
モモ
あなた〜遅れたァ〜!
あなた

知ってる
チェヨン達が準備してくれたから準備終わったらお礼してきな

モモ
モモ
はぁ〜い
サナ
サナ
ももりんいつもあんなんなん?
あなた

うん
練習始まったらもっとしっかりしてるけどね笑

モモ
モモ
あなた〜!!!!!!!バスパン忘れた〜!!!!!!!
あなた

はぁ……

あなた

私のロッカーの中に入ってるからそれ使って〜!

サナ
サナ
これもいつもなん?
あなた

…うん



バスケが上手いのにバスパンやらバスTやら諸々を一週間に1回は忘れてくる






バスケの練習以外もしっかりして欲しい





そんなことをしていると練習が始まる時間






センターサークルに集めて今日の目標を1人ずつ
あなた

スリーを5分の4の確率で決めます

モモ
モモ
うちは〜…1対1で全勝!
チェヨン
チェヨン
私は…あなた先輩を抜きます
あなた

お、頑張ってね

チェヨン
チェヨン
はい!


全員の目標を聞いた所で円陣を組んで開始の合図をする




早速練習を始めよう…というところでナヨン先生が来た
あなた

集合!

ナヨン先生、こんにちは!お願いします!

こんにちは!お願いします!
ナヨン
ナヨン
こんにちは!
今日も頑張りましょうね!
と言ったところで私達は練習に戻る





ナヨン先生はさなの存在に気づいたのかさなとなにやら話している






その風景に気付いたのかモモも同じように聞いてくる
モモ
モモ
なぁなぁ
あなた

ん?

モモ
モモ
なんでサナおるん?今日は調理部も部活あるやろ?
あなた

先生が変わってつまらなくなったらしい

モモ
モモ
え、あの優しい先生いなくなってもうたの!?
あなた

いなくなってはないけど顧問からは外れたみたい

あなた

とりあえず今は練習に集中してよ

モモ
モモ
ごめんて笑


しばらく練習をしていてゲームの時間





ナヨン先生の出す練習メニューは信じられないほどきついものだが





最後にゲームを入れてくれるあたりさすが分かってるなぁと思う





始まって少し経つとみなヒートアップしてきたのかファウルギリギリの激しい戦いになっていく






そんな時だった






チェヨンからモモにボールが渡り、モモから私にボールが出される






はずだった






ディフェンスに押されたモモは体勢を崩して






パスが変な所へ飛んでしまった







不運に不運が重なったのだろうか






その先にはつい先程まではいなかったうちの担任がいた






急いで走りボールを弾く






スピードを抑えきれずに担任に衝突しそうな状態へ






この体格差だ、ぶつかれば私ではなく向こうが怪我をしてしまう






そう思いどうにか足を前に出して衝突は避けた







が、スピードは抑えきれず



前に倒れそうになって急いで壁に手をつくと





所謂壁ドンという形になってしまった
ミナ
ミナ
っ…あなた…さん?
あなた

すみません先生、大丈夫ですか?

ミナ
ミナ
大丈夫…やけど………///
先生は俯いて何やら顔を隠している




私が汗臭かったのかもしれないと思い、急いで離れようとすると






足がもつれて後ろに倒れる
あなた

いって…

モモ
モモ
あなた!大丈夫?!ごめんな!?
あなた

大丈夫

展開についていけないと言うような顔でサナとナヨン先生が駆け寄ってくる
サナ
サナ
だ、大丈夫?足、捻った?
あなた

ギリ捻ってないから大丈夫



担任が顔を隠してしゃがんでしまった





怖がらせてしまったのかだろうかと思い声をかけようとする




が名前がわからないためにかけられない…
あなた

先生、大丈夫ですか?

あなた

…サナ、あの人の名前なんだっけ

サナ
サナ
はぁ?自分の担任やのに忘れたん!?笑笑
サナ
サナ
ミナ先生やろ、名井南
あなた

ありがと




そう言ってミナ先生の元へ
あなた

ミナ先生、大丈夫ですか?

ミナ
ミナ
あ…大丈夫やで!あなたさんは…
あなた

大丈夫です
この辺危ないんで良かったらサナと一緒にいて下さい

ミナ
ミナ
ごめんね…?

上目遣いで言ってくる






少し可愛いと思ってしまったのは





気の迷いだろうか
あなた

大丈夫ですよ

するとナヨン先生がアイシングを持ってきてくれた
ナヨン
ナヨン
捻った?
あなた

捻ってないです

ナヨン
ナヨン
どこ痛い?
あなた

ちょっと足首痛いです

ナヨン
ナヨン
冷やすからバッシュぬいで
あなた

はい
お願いします



さすが先生、動きが早くて頼りがいがある






やってもらっている時にひとつ疑問が浮かんだ
あなた

そういえばミナ先生、なんで体育館にいるんですか?

ミナ
ミナ
あ、うちの部の子がサボってるって他の子から教えて貰ってん
やから探しに来たんよ
あなた

……あれ、ミナ先生って調理部の顧問ですか?

ミナ
ミナ
え、なんで知っとるん…?
あなた

サボってるのならそこにいますよ

サナ
サナ
ギクッ
ミナ
ミナ
え、あ、ありがとう!
サナ
サナ
あなた〜!なんで言ってまうん!!!!!!!
あなた

サボるんが悪いやろ

サナ
サナ
ちょっと関西弁うつっとる笑笑
あなた

なんだったらみな先生もサボっちゃえばいいんじゃないですか?

ミナ
ミナ
さすがにそれは……笑
あなた

きついメニュー出しときながら自分は職員室でスマホゲームしてる先生だっているんですし

ナヨン
ナヨン
ギクッ
ナヨン
ナヨン
な、なんでバレて…
あなた

部長なめんなですよ笑

ミナ
ミナ
それなら…ちょっと見てってもええ?
あなた

いいですよ笑



意外だった




あの先生がこんな素直にサボるとは…



















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