あれから、2週間の月日が流れた。
今私が立つここは空港のロビーというかエントランスというか。そんな感じの場所。
あれから毎日のようにミナ先生は私の元を訪れ、何度も好き、大好き、愛してるを伝えてくれた。
勿論私もそう。何度も伝えた。親が帰らなかった時はかなり危ないラインまで行ったこともあった。
この2週間でやりすぎだろって?
あの先生も抵抗しなかったんだからいいの。なんなら誘ってきたのはあの人なんだから。
それで、今私は目の前のこの人と話してるわけだけども。
めちゃくちゃ泣かれて私が泣かしたみたいに見られてるのがとてもじゃないけど耐えられない。
とことこと私の胸の前に来た彼女を今まで以上に強く抱きしめてあげると、それが引き金になったのかまた泣いてる。
どうしたら泣き止んで貰えるのかわからなくて、ただ抱きしめるしかできないでいると。
ふと目に入ったのは彼女を見つめる男どもの目。
何がおかしい、という意味を込めて睨みつけると急いで目を逸らす。
怖がるくらいなら最初から見ないでよ、怖がられるのも嫌なんだから。
何を見てたんだろうと上からミナを見ると、今更気付いたスカートの短さ。
今までで1番衝撃だよね。え、こんなスカート履いてくるやつおる?
私にだけ見せてよそういうの。
いつの間にか私の背中に手を回してグズグズ言ってる彼女を一旦引き剥がして、
私が着ていたコートを被せて後ろから抱き着く。
そんな会話をしていたら私の乗る飛行機の30分前のアナウンス
渋々目の前の人から離れると、突然私の胸に押し付けられるテディベア。
なにこれ?と聞くとこれを私だと思って頑張れってさ。
人形ならほかにもあっただろうに、わざわざクマを選ぶのが可愛いところ。
少し涙ぐんでいる彼女の綺麗なその唇に触れて、キャリーケースを手に搭乗口前に移動する。
あぁ...あんなこと言ったけど、私も離れたくないなぁ...
今になって押し寄せる後悔。あの時最後までしちゃえばよかったかなぁ、なんて。
こんな時にまであの時のミナの姿を思い出して口角を上げてる私はどれだけ変態なのか。
ふと名前を呼ばれた気がして振り向くと、控えめに手を振り、いつかお揃いで買ったネックレスにキスをして。
それをした後すぐに1人で恥ずかしがってるミナがとてもじゃないけど愛おしすぎて。
手にあるテディベアの口に、見せつけるようにキスをして。
それを見てもっと赤くなった彼女が、早く行け、とでも言うように手で私を追い払う。
やっぱり、好きだなぁ...
そんなことを思いながら、機内へと足を進める。
ミナside___
とうとう、あなたの背中が見えなくなった。
最後の最後まで、私ばっかり赤くなって嬉しくなって。
最後くらい、私が年上らしく振る舞いたかったのに。
自分で見せつけて自分で恥ずかしがった上に年下のあなたに見せつけられて。
どこまでも私を愛してくれて、どこまでも私が彼女を愛してしまう。
七ヶ月、どれだけ辛くても彼女とのこの関係が、私を助けてくれる。そんな気がしてならない。
もし、次あの子が帰ってきた時には。
私がもっと年上らしくリードできるように。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。