月島さんからの話は、
俺の中に黒く渦巻くものを沸かせた。
浅野という男や、
行きずりの相手達との行為に醜く嫉妬していた。
月島さんにさえ嫉妬を覚えた。
(手を引け、て何だよっ。)
何も知らず何も出来なかった自分に嫌気がさした。
何処に当たればいいか分からない怒りの感情が止まらない。
思い浮かぶアキさんの笑顔が、
今は憎くて堪らない。
今までの全てが薄っぺらに思えてきて、
吐きそうになった。
それなのに、
俺の足は自然とアキさんのもとに歩いていった。
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不眠による疲労で意識がぼんやりしている。
ソースケにはあまり悟られたくない。
話題にしたことはあるかも知れないが、
ソースケに月島を会わせた事はない。
オレは今何を聞いている?
頭が真っ白になった。
全身が震え、
悪寒が走る。
両肩を強く掴まれ詰め寄られる。
体から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
何か言わなければ。
上手く言葉が出ない。
息が出来ない。
そんな訳ない。
それすら言葉にならない。
否定したくて何度も首を振る。
言葉よりも嗚咽が喉を上がってくる。
腕を痛いほど引っ張られ、
ベッドに突き倒される。
着衣を乱暴にむしり取られていく。
唇に噛みつかれ、
抗う声すら許されない。
唇の切れる痛みと襲われる恐怖に身を翻すが、
うつ伏せに押さえ付けられる。
ソースケの身体がのし掛かり、
太腿の間に彼のモノが擦り付けられる。
這いつくばり逃げ出そうとする肩に噛みつかれる。
ほぐされていないすぼみに、
容赦なく衝き入れられ、
幾度も肉壁を抉る。
何でこんな事に?
まだ夢の中なのか?
もうオレは逃げられないのか?
オレの中から肉感が抜かれ、
強引に身体を翻された。
強い力で握り絞められる。
潰されそうな苦痛に悶絶する。
再び身体の真ん中を衝き侵される。
与えられる身体の苦痛。
なのに、
刺激によって目覚める快楽。
結局オレは、オレの身体は、
汚れきっている。
こんな風にしか成れない。
オレは顔を背け、
嗚咽と矯声が混ざる息が出てしまうのを堪えながら、
ただこの行為が終わるのを待った。
俺の顔をはたくように、
眼を合わせられる。
嫌だ、ソースケには、
ソースケだけには見られたくない。
なのに、
頭を持ち上げられソースケの視線がオレを射ぬく。
…消えてしまいたい。
…どうして?
そんなの、身体が熱くなってしまう。
高鳴る胸が痛いよ。
ソースケが苦しそうな顔でオレを見詰めている。
なのに、嬉しいだなんて思ってしまうんだ。
口内に舌が押し込まれ、
気道を塞ぐ。
乳首をきつく摘ままれる。
抗えない刺激に身震いする。
うなじに強く吸い付かれ、
歯をたてられ皮膚がちぎれた。
痛みと快感がより深く交ざっていく。
…いいよ。
ソースケになら何されたっていい。
このまま、息が止まったっていい。
オレが果てると、
その行為は終わった。
ソースケは精を放たなかった。
茫然と寝転ぶオレを、
ソースケはぎゅっと抱き締めた。
ソースケの体温を感じ、
胸が苦しくなる。
…好きで堪らない。
ソースケの瞳からの滴が落ちて、
血の滲んだオレの肌をつたった。
オレはソースケを抱きしめ返した。
もう、それだけで良かった。
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オレの手を取り、
左手の薬指にキスを落とす。
あの日みたいに。
ソースケの瞳が遠慮がちに、
オレを覗き込む。
…愛してる。
…ソースケを愛してる。
夢ならば覚めないで。
このままオレを縛り続けて欲しい。
全部をソースケで満たして、溺れさせて。
オレの全てが君だと言わせて。
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R指定にはしましたが、
エロみはあまり無かった気がします。
もっと激しく罵る予定でしたが、
話を作る上で何十回も、
アキの感情に入り、
ソースケの感情入り、
犯し、侵され、
私の方が苦しくなってしまいました。
アキの呪いを解くにはどうすればいいか、
というのが作者の悩みでした。
暖かく優しい愛情だけでは府に落ちませんでした。
そして考え付いた結論は、
より強力な呪いをかけるという事でした。
それは救いとは言えないかも知れませんが、
全てを無くすことなんてどうせ出来ないのです。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!