結局まだしていない。
理解したこと、アキさんが欲しいのは、
俺から求められるって事のようだ。
大丈夫、安心していいよ。
全部欲しいから。
もう、アキさんを全部欲しいから。
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またの週末。アキさんの部屋。
どこか出掛けるか尋ねるアキさんに
今日はアキさんの家がいいと答えた。
意を決して出したセリフはあまりにまぬけに聞こえたと思う。
出し抜けにこの切り出し方はアホだな、俺。
ムードの欠片もねえし。
先週の、
あの甘い雰囲気は何処に消えた?
俺もアキさんも気まずい感じだ。
完璧空回りしてる空気感。
子供でもあやすみたいに優しく返すアキさん。
でも、
瞳が泳いでる。怯えてる?
俺の事、求めてくれたんじゃないの?
俺だってそうだって、
俺だってアキさんに欲情してたよって、
どうしたら分かってもらえるの?
もっと上手くアキさんに伝えたいのに、解って欲しいのに。
アキさんはちょっとどう説明しようかと言葉を選んでいる。
辛そうな顔でそんな言い方すんなよ。
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アキさんの声は冷やかに聞こえる。
アキさんは俺の正面、床に座る。
俺の顔見てくれない。
俺のジーンズのベルトをガチャガチャと雑に外し出す。
膝までジーンズを下ろされるも、俺の高ぶりは襲って来ない。
アキさんは作業でも続けるように下着にも手を掛けようとする。
アキさんの手を掴み、
その事務的な動作を制止させた。
ダメだ、こうゆーんじゃないんだって。
こんな処理行為じみた感じでしたいんじゃないんだ。
アキさんの両腕を掴み引き寄せる。
やっと俺と眼が合った。
アキさんはちょっと困ったような顔してる。
解きほぐしたい。
耳にかかる髪に俺の指先を埋めてゆく。
少し震えてる?
耳がほんのり赤く染まる。アキさんの熱が上がるのが伝わってくる。
耐えきれないとでもいうように、目線を下げようとするアキさんを俺は逃がさない。
俺の唇がアキさんの唇を掬い上げ、捕らえ、弄ぶ。
柔らかい唇の隙間に舌を割り込ませると甘い口内にアキさんを見つける。
逃げるアキさんを追うようにもっと奥へと。
やっと観念してくれたのかぎこちなく答えてくれるアキさん。
…可愛い。
もっと絡めて。
俺と交ざって。
ねえ、アキさん。
好きだよ。
俺の情欲がむくむくと盛り上がる。
ほら、全然大丈夫。
むしろ、
…むしろ…ヤバイよ。
アキさんのシャツに手を掛け、脇腹をなぞるように剥き上げていく。
くすぐったいのか身を引く腰を強く押さえる。
待たない。
…待てない。
俺がアキさんに触れたい。
可愛いとこもっと見せてよ。
アキさんのもちゃんと反応してる。
布の膨らみを優しく撫で上げると、
声を押し殺し、身を少しよじるアキさん。
部屋着のアキさんのズボンの中に手を差し込む事は容易で、
直に触れると昂りが脈を打った。
少し潤んだ先端を指先で撫でると、甘い吐息が漏れた。
握り込みゆっくり扱くと、
また、息を殺すように悶えるアキさん。
…エロい。
…可愛い。
俺の愛撫から逃れるようにキスで抗う。
服を剥ぎ取り、
火照る身体を押し掛け、
胸板をアキさんの長い指が撫で下ろす。
俺の猛ったモノが温かい手の中に包まれ、
容赦なく快感を突き上げられる。
攻め立てられ引き上げられる快楽感を紙一重で我慢する。
出、出るから。…出ちゃうから!
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アキさんはおずおず呟く。
熱っぽい顔で。
甘えた声で。
肩を抱き寄せる。
まだ、不安なの?
俺今こんなにアキさんに反応してるのに。
額にそっとキスをする。
信じていいよ、アキさん。
俺の手を取り指を唇にふくむ。
アキさんの舌が艶かしく這い俺の指先を濡らしてゆく。
もっと口内を犯したくなる残虐な感情を、
欲求不満のまま引き剥がされた。
そのまま導かれる。
熱いアキさんの中をまさぐる。
グシャグシャに乱れさせたい思いと、
優しくしたい思いでアキさんの中をかき混ぜる。
奥を擦り上げるとビクンっとアキさんの身体が跳ね吐息を漏らす。
アキさんに導かれアキさんの中に欲情を突き入れた。
やっぱり少しキツいのかアキさんが歯をくいしばったけど、
俺が躊躇を見せると構わないと言うように腕を掴み微笑んだ。
そんな仕草が愛しくてキスをした。
額に、頬に、瞼に、唇に、首筋に。
どれだけしても足りない。
痛くしないように辛くないようにとゆっくり動きだす。
早く快楽を登り詰めたい本能を押し留め、
少しずつ馴染む感覚に煽られながらペースが速くなる。
俺の動きにアキさんの身体が跳ね、甘く囀ずる。
汗ばんだ肌と肌が擦れ合う。
アキさんの甘い喘ぎといやらしい水音、
ベッドの軋む音が部屋に響く。
今こーゆう時に言うの?
俺の言って欲しい事言ってくれるの?
煽ってんの?
可愛いすぎんだよ。エロいんだよ。
そんな潤んだ瞳で。
甘美な声で。
淫靡な腰付きで。
そそりすぎなんだよ。
俺ばっかよくなってアキさんの中で何度も果て猛った。
終わりたくないと貪った。
自分の中のこんなに激しい狂熱を初めて知った。
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正直、…気持ちよすぎて無我夢中だった。
自分本意にしたかも知れない。
アキさんが果てても、止まんなくて無茶したと思う。
アキさんは起き上がれないほどぐったりしてるし、
俺も疲労感でくたくただった。
俺の指に指を絡ませるアキさん。
そのまま手の甲にキスをされた。
あんたに言われるか。
それこそおまいう。
両腕を広げバグをせがむアキさん。
なんだよ、
また、可愛いことして。
ぎゅーしてやる。
ぎゅうぎゅうしてやんよ。
耳元で囁いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。