大概平日はアキさんの帰宅はあまり早くない。
相変わらずチャット&ネトゲ(+アキさんの晩酌)が、
二人の夜寝るまでのルーチンて感じだ。
時々珍しく仕事が早く終る日は連絡をくれたりもする。
それでも外で一緒にメシ食える程度の時間しかない。
週末。
お互い特に用事が無いようなら二人でいる。
買い物とかドライブとか、
デート…したり。
夜はアキさんの部屋。
夕飯ご馳走になって後片付け手伝ったり、
のんびりTVとか映画とか、やっぱゲームとか。
そんなに今迄としていることは変わらない。
アキさんの事で少し知ったこと。
驚いたのはバイセクシャルだった事。詳しくは語らないけど、過去にそれで辛い恋愛があったみたいだ。
結構なオタクらしい事。今の部屋にはあんまりそーゆう物は無いけど、実家にはいろいろ黒歴史があるらしい。
俺の大学のOBだった事。大学卒業後そのままこっちで就職したのが今の仕事なのだそうだ。
週末は俺といるから夕飯食ってるけど、普段夜は晩酌につまみだけだという事。酒はアホみたいに呑むくせに、たしかに少食で俺にばっか食わそうとする。そんなんで身体大丈夫なのかと心配になる。
そして、かまってちゃんでキス魔だ。
どうやら俺の弱点は耳だと、
正確にはアキさんの声なんだけど、
気付いたらしく執拗に攻められている。
尾てい骨がむずむずしっぱなしで、
ほんとマジで困ってる。
ゼロ距離でキルかましてくるからタチ悪い。
で、
その流れからの…キス…だ。
コンボしてきやがる。
レベルも徐々に上がってきて、
…舌とか。
端で聞いたら何DTみたいな事言ってんだって話だが、
アキさんの事はそりゃあ好き…なのは置いといて、
俺、まだ男同士とか全然解かんないままだし、
実技と学科は別っていうか、
ムラっけ出して止まんなくなったらどうしようって。
本当は俺だってアキさんともっと深く繋がりたい。
そうゆう事して気持ちがもっと近付くのなら、
したいって思う。
でも実際、
そのまんま激情に乗っかって新しいもんに目覚めてしまうか、
急に熱が引いて踏み込めなくなって気まずくなっちまうのか、
どっちに転んでしまうか、正直言って自信が無い。
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週末の夜、やっぱり俺は淫魔に襲われていた。
床に打ち付けた肩甲骨も痛かったのもあるけど、
俺の両膝を割ってアキさんの右太腿が生殺しのアイツに擦れて、
今止めないとダメだと感じた。
組み敷かれたまま制止の命令を懇願した。
アキさんはしょんぼりした顔をしたけど、
俺の肩を抱き、身体を起こしてくれた。
俺が居心地悪くなって逃げ出さないように、
直ぐに自然体を振る舞う。なんにもなかったかのように。
そしてキッチンに向いたアキさんの表情は見えない。
俺はきっと彼を傷付けている。
ケーキと紅茶の準備をし始めたアキさんの背に体を寄せ、
他に思い付く言葉も見付からず呟いた。
俺の頭をグシャグシャと撫でる。
この仕草の意味を俺は知っている。
我慢している時の態度だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。