ぼんやり空を見上げる。少し、薄暗い。ただ、街はイルミネーションの明かりで輝いている。
「あなた。」
声のした方を振り返ると、えいちゃんが立っていた。肩で息をしていて、走ってきたんだろう。
「待った?」
よく女性が男性に言う、セリフ。私は少し考えてから微笑んだ。
「待ってませんよ。いま来たところですから。」
そうは言ったものの、楽しみで早く来てしまい30分近くも待っていた。
「良かった。」
「行きましょう。」
アバンティーズの買い出しでよく行くお店の方向に歩き出す。
「おい。」
手を掴まれて、むかっていた所とは反対の方向に引っ張られる。
「えいちゃん?どこ行くんですか?」
「…秘密。」
そのまま数十分引っ張られ、ある建物の前に着いた。山奥の別荘だった。
「…え?ここ、どうしたんですか?」
「たまにみんなでここ来てんの。俺のとこだから。」
驚き、固まってしまう私をよそにえいちゃんは中に入っていく。
「ちょ!えいちゃん!…お邪魔します!」
ついて行ってみると、クリスマスツリーが目に入った。2メートルは越えていそうだった。
「すごい…ですね。」
迫力に圧倒されて、呟く。えいちゃんは何やら袋の中を漁っていた。クリスマスツリーを見つめ続ける私に声を掛ける。
「ん。これ、クリスマスプレゼント」
「え?」
目の前に差し出される小さな箱。困惑を浮かべながらそっと蓋を開ける。
「わぁ…」
思わず声が出ていた。箱の中には小さなハートがついたネックレスが収められていた。そして、えいちゃんの手によって私の首につけらえる。
「ありがとう…ございます。……あっ。私からも、クリスマスプレゼントです。」
私はカップケーキを作っていた。えいちゃんは目を輝かせる。
「かわいい…。」
あのツンツンえいちゃんがかわいいなんて言うんだ、と驚いてしまう。ポッケからスマホを取り出す。
ガチャン
思わず、びくっと反応する。えいちゃんのスマホが落ちていた。そこに映る寝ている少女。
ー私だ。
それは、どう考えても寝ている私だ。えいちゃんは顔を真っ赤にする。
「えっと…あのー…」
二人きりの夜は、まだまだ続きそうだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。