俺がどんなに探しても、願っても、ミナを見つけ出すことはできず、5年の月日がたった。
俺は都会にでて、美容院で働いていた。
たくさんの人と関わりをもち、少しは気持ちが和らいだ。
でもやはり、俺は暗くなったとよく言われる。
それはそうだ。
俺にとっての光はミナ。
光を失った今の俺に、明るく振る舞えなんて無理な話。
でも実際上京して働く年になったのだから、明るく振る舞わないわけにはいかない。
だからいつも、明るい奴を演じている。
同じ美容院で働く先輩、チョン・ホソクさん。
年はあまり離れていないのに、チームリーダーを任されている凄腕美容師。
俺も専門学校では成績1位で、遺伝なのか知らないけど才能はあるようだった。
ホソギヒョンは指導の仕方も上手くて、普段は頼れる優しい兄さんって感じ。
この人はモモさん。
美容院で働く仲間で根は優しく思いやりのある人。
こうみえて、ホソギヒョンとモモは恋人同士。
職場には言いたくないらしく、このことを知っているは2人と俺だけ。
モモは俺と同期みたいなもの。
仕事を終えて駅へと向かう。
その道中、あるBARの前を通った。
1度だけ行ったことのあるBAR。
たしか、半年くらい前かな。
その日の俺は、なぜかそのBARに吸い込まれるように入っていった。
中のカウンター席に座る。
奥の方に何人かお客さんがいて、カウンター席の2つ隣には若い男性が座っていた。
BARのオーナーさんがグラスを磨いていた。
2つ隣にいた男性がオーナーにそう話しかけ、グラスを差し出した。
結構親しげで、常連だからだろうなと思った。
そんな俺の考えていることが分かったのか、オーナーが近づいてきて耳元で呟いた。
オーナーは鈍感な人だなと感じた。
そんなの好きだからに決まってるのに。
チラッと横を見ると、幼馴染さんが俺を睨みつけていた。
殺気を感じてすぐに目をそらす。
嫉妬深い人……なんだ。
オーナーさんがカウンター奥に行った時、急に話しかけてきた幼馴染さん。
さっきの会話聞こえてなかったのかな…。
恋のライバルとか勘違いされては困る。
俺には彼女がいるから。
たしかに冷たい人だな。
俺はミナの話をした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。