第28話

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2022/10/14 11:50

















俺がどんなに探しても、願っても、ミナを見つけ出すことはできず、5年の月日がたった。


俺は都会にでて、美容院で働いていた。






たくさんの人と関わりをもち、少しは気持ちが和らいだ。

でもやはり、俺は暗くなったとよく言われる。

それはそうだ。

俺にとっての光はミナ。

光を失った今の俺に、明るく振る舞えなんて無理な話。

でも実際上京して働く年になったのだから、明るく振る舞わないわけにはいかない。

だからいつも、明るい奴を演じている。







ホソク
ホソク
ジミナ!
16時から新しく予約入ったから、担当してくれる?
ジミン
ジミン
あっ、わかりました!
同じ美容院で働く先輩、チョン・ホソクさん。

年はあまり離れていないのに、チームリーダーを任されている凄腕美容師。

俺も専門学校では成績1位で、遺伝なのか知らないけど才能はあるようだった。

ホソギヒョンは指導の仕方も上手くて、普段は頼れる優しい兄さんって感じ。




ホソク
ホソク
そういやジミナ、またジミナ指名での予約あったけどどうする?
ジミン
ジミン
え、……はぁ
ジミン
ジミン
やりますよ、仕事ですから…
ホソク
ホソク
さすがㅎ
ジミナに惚れちゃうお客さん
多いからねぇ〜
ジミン
ジミン
ヒョンのファンも
結構いるじゃないですか
腕もいいし優しいしカッコイイしって噂ですよ?
ホソク
ホソク
どこ情報?
ジミン
ジミン
昨日きたお客さんから聞きました
ヒョン目当ての人も多いみたいです
ホソク
ホソク
……
ホソク
ホソク
全く知らなかった…
ジミン
ジミン
え、どれだけ鈍感なんですか
モモ
モモ
ほらほら、休憩ばっかしてないで働いてよ!
ホソク
ホソク
なんだよぉ、モモだって昨日休憩時間過ぎてるのにずっとお菓子食べてただろ?
モモ
モモ
お菓子は大事な栄養補給!
早く行って!
この人はモモさん。

美容院で働く仲間で根は優しく思いやりのある人。

こうみえて、ホソギヒョンとモモは恋人同士。

職場には言いたくないらしく、このことを知っているは2人と俺だけ。

モモは俺と同期みたいなもの。






ホソク
ホソク
モモなんか機嫌悪いなぁ💦
なにかしちゃった?
ジミン
ジミン
あー、多分お客さんですね…
ホソク
ホソク
え?
ジミン
ジミン
ホソギヒョンファンのお客さん来てますよ
ホソク
ホソク
え、あの人のことだったの?
ジミン
ジミン
他にもまだ居ますよ
モモ嫉妬してるんじゃないですか?
ホソク
ホソク
へぇ、モモって嫉妬することあるんだ
可愛い♥
ジミン
ジミン
はいはい、早く行ってください
お客さん待ってますよ
ホソク
ホソク
ㅋㅋ
















ジミン
ジミン
お疲れ様でした
仕事を終えて駅へと向かう。

その道中、あるBARの前を通った。

1度だけ行ったことのあるBAR。

たしか、半年くらい前かな。

その日の俺は、なぜかそのBARに吸い込まれるように入っていった。

中のカウンター席に座る。

奥の方に何人かお客さんがいて、カウンター席の2つ隣には若い男性が座っていた。
ジヒョ
ジヒョ
いらっしゃいませ
BARのオーナーさんがグラスを磨いていた。
ジヒョ
ジヒョ
あれ、お客さん
前にもここ来ませんでした?
ジミン
ジミン
え、あ、はい
半年前くらいですかね…
ジヒョ
ジヒョ
おぉ、また来てくれたんですね!
ありがとうございます!
ジミン
ジミン
なんか自然と入っちゃったんですㅎ
ていうか、半年前に来た客のことよく覚えてますね
ジヒョ
ジヒョ
この店に来る人はほとんど限られてます。外見はBARっぽくないから、新規のお客さんはたまにしかお見かけしないんですㅎ
ジヒョ
ジヒョ
だから前あなたが来たときは無意識に覚えっちゃったんですよㅎ
ジミン
ジミン
へぇ、じゃあ俺も常連になろうかな
ジヒョ
ジヒョ
ぜひぜひ!ㅎ




ユンギ
ユンギ
同じやつ
2つ隣にいた男性がオーナーにそう話しかけ、グラスを差し出した。
ジヒョ
ジヒョ
このお酒気に入ったんだㅎ
ユンギ
ユンギ
あぁ
結構親しげで、常連だからだろうなと思った。

そんな俺の考えていることが分かったのか、オーナーが近づいてきて耳元で呟いた。
ジヒョ
ジヒョ
あの人、私の幼馴染なんですㅎ
ジミン
ジミン
え、そうなんですか?
ジヒョ
ジヒョ
昔から冷たいわりには、毎日ここ来るんですよㅎ
無理して来ないでいいのに……ㅎ
オーナーは鈍感な人だなと感じた。

そんなの好きだからに決まってるのに。

チラッと横を見ると、幼馴染さんが俺を睨みつけていた。

殺気を感じてすぐに目をそらす。

嫉妬深い人……なんだ。




ユンギ
ユンギ
おい、お前ジヒョの知り合いか?
オーナーさんがカウンター奥に行った時、急に話しかけてきた幼馴染さん。
ジミン
ジミン
え、ジヒョ?
ユンギ
ユンギ
ここのオーナーだよ
さっきの会話聞こえてなかったのかな…。
ジミン
ジミン
あ、いえ
ここ来るの2回目で、たまたま話してただけです!
恋のライバルとか勘違いされては困る。

俺には彼女ミナがいるから。
ユンギ
ユンギ
…そ
たしかに冷たい人だな。
ジミン
ジミン
……あの、ジヒョさんのこと好きなんですよね?
ユンギ
ユンギ
……は
ジミン
ジミン
え、違うんですか?
ユンギ
ユンギ
ちがっ……くわないけど
ジミン
ジミン
ㅋㅋ
ジミン
ジミン
告白しちゃえばいいじゃないですか!
ユンギ
ユンギ
……いや、どうせ無理だ
ジミン
ジミン
どうして?
ユンギ
ユンギ
あいつは俺の事ただの幼馴染としか
思ってない
ジミン
ジミン
分からないじゃないですか
俺だって高校生のとき幼馴染に告白して成功しましたよ!
ユンギ
ユンギ
お前が?
ジミン
ジミン
……どういう意味ですか
ユンギ
ユンギ
別に……
ユンギ
ユンギ
その幼馴染とはまだ続いてんの?
ジミン
ジミン
……続いてるというか







俺はミナの話をした。


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