第52話

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2023/03/17 12:27



 玲王 side







 布団の中に入ると



 思ったよりも距離が近かったり、

 あなたからほのかに自分と同じ匂いがして


 異常に心拍数が早くなった








 冨岡あなた
御影くん
 玲王
っ、あ、なに?
 冨岡あなた
あはは、緊張しすぎ






 小さく笑うあなた。

 あなたはあまり笑わない



 たまに見るあなたの笑顔はまるで幸せを拒むように

 遠慮がちに、控えめに笑う程度だ。







 玲王
あなた、
 冨岡あなた
うん?
 玲王
俺の事嫌いか?





 「っ、え」と間抜けな声が聞こえた


 擦れるような音がして、

 あなたが顔をこちらに向けたのが分かった







 冨岡あなた
…… うん、嫌いだよ。






 弱々しい声だった



 表情が見えない分、

 それが本当なのか分からなかった







 玲王
婚約者… なんて最初は良く思えなかった。
結婚相手まで親に決められんのかよって
思ってた。
 玲王
でも、俺が想像してたよりお前はずっと良い奴で、お前が婚約者で良かったって思った





 あなたは黙って聞く



 俺は言葉を続ける






 玲王
中2…、の最後らへんだっけ
お前は俺と距離をとった
 玲王
嫌いになったなら別にいい。
距離を取ろうが、お前から言わないなら
無理やり理由を聞こうとも思ってない
 玲王
けど、これだけは聞きたい






 玲王
なんであの時、泣いてたんだよ







 急に距離を取られたのは嫌だった

 普通に話せたくなったのは寂しかった

 嫌われて、泣きたいぐらい悲しかった




 けど、お前はあの時泣いたんだ





 泣きながら俺の前から去っていったんだ








 冨岡あなた
れお、くん







 泣いているような声だった



 驚いて隣を見ると、薄暗いけど

 案の定あなたが泣いてるのが見えた








 冨岡あなた
君と居る毎日は、すごく…楽しかった
自分が、まるで、普通の女の子に
なれたような気がした…っ
 冨岡あなた
けど、私は…幸せにはなってはいけない
 冨岡あなた
だから、君は、珠莉ちゃと幸せになって





 「なんで珠莉が出てくるんだよ」と

 言いたかった。



 俺は、…… お前が好きなんだ、多分。

 きっと、ずっと前から。





 切なさの滲む声で、

 喉を震わせないように喋るお前が心底好きで



 それだけは分かってて。








 冨岡あなた
大好きだよ、レオくん。
 冨岡あなた
君が幸せなら、私は何もいらない






 そう言い切るあなたに、

 切なさとか、好きがいっきに溢れ出す



 小さな唇に、自分のそれを優しく重ねた

 あなたは抵抗はしなかった







 玲王
好きだ。
 玲王
お前が居てくれるなら、死んでもいい





 覆い被さるようにして抱きしめると

 あなたもゆっくり背中に手を回してくれた







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