寝ていたぼくの額に冷たくて硬い物が当たり、目を覚ました。
暗闇の中、ぼんやり見える人影に息が止まりそうになる。
ぼくの問いかけに応じず、彼女?は額の物をカチャリと動かした。
自分自身が死ぬのも怖いけど、それよりもこの部屋にある薬品が入った瓶を破壊されることの方が怖かった。
爆薬でみんなを巻き込むのもイヤだし、なぜか彼女も巻き込みたくなかったんだ。
彼女は話を聞いてくれてるのか、動かない。
声を震わせながらなんとか言うと、彼女は離れてくれた。
ひとまずお礼を言ってから、電気を付ける。
明るくなって見えたのは、至る所に置かれた薬の瓶の山と狐面を被った全身黒づくめの人間がぼくに銃を向けている姿やった。
声と話し方からして、やっぱり女性やなと思いながら両手を上げるぼく。
立ち上がりながら彼女の目を見ると、微かに揺れていた。
ぼくは言葉を聞いた後、両手を上げたまま背を向けた。
背中に押し付けられた銃を感じたけど、ぼくは立ち止まったまま動かない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。