第28話

バレンタイン【じんたん】
972
2018/02/05 13:06
今日はついにバレンタイン。




俺はめっちゃ頑張ってチョコを作った。






バレないように女子っぽく。










よし、これを下駄箱に入れとこう。


じんたん
………よし













放課後──










じんたん
テオくんかーえろ……
テオくんは女子にめっちゃ囲まれてた。





チョコをあげるために。






ああ、






俺も女子だったらあそこで直接渡せたかな。













なーんてね。




臆病な俺は女子になってもダメだと思う。






テオくん
じんたんお待たせ
じんたん
おかえり
うわ、チョコいっぱいだね
テオくん
うん、俺食いきれないし、
じんたんいっしょに食う?
じんたん
あげた女子に悪いよ、
テオくんに食べてもらいたくて作った訳だし
テオくん
そっかぁ…………
じんたんって女心わかるよねっ!
じんたん
そー?



ホントはそこにあるチョコ、





ぜーんぶ食べたいよ。








本物の女子がテオくんのために作ったチョコを、




愛情をすごくこめたチョコを、











テオくんには食べて欲しくなかった。



テオくん
じんたんー?帰ろー?
じんたん
あ、ごめんごめん
おれはつい、ぼーっとしてた。







教室を出て、


下駄箱へ向かう。





下駄箱に近づくたび、





俺の鼓動は早くなってく。








顔が赤くなるのを隠しながら歩き、




やっと下駄箱にテオくんが手をかけた。




テオくん
ん?なにこれ?
じんたん
チョコ?
俺はまるで、





自分が作っていないような態度でテオくんに話しかけた。
じんたん
誰からー?
テオくん
えとね………
名前書いてない!
じんたん
えー!めっちゃ気になるやん!!
テオくん
ねー!あ!手紙ある!
ホントだね、と、俺はテオくんに笑いかけた。
じんたん
テオくんモテモテだね!
テオくん
そおー?ありがとーw
テオくん、ごめんね。





モテモテで嬉しいよね。


可愛い子、いい子。






たくさんの女子から。







でもね、




その手紙も俺からなんだ。









頑張って女子っぽい字書いたんだよ?








褒めてもらえるわけないのに。

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