今日はついにバレンタイン。
俺はめっちゃ頑張ってチョコを作った。
バレないように女子っぽく。
よし、これを下駄箱に入れとこう。
放課後──
テオくんは女子にめっちゃ囲まれてた。
チョコをあげるために。
ああ、
俺も女子だったらあそこで直接渡せたかな。
なーんてね。
臆病な俺は女子になってもダメだと思う。
ホントはそこにあるチョコ、
ぜーんぶ食べたいよ。
本物の女子がテオくんのために作ったチョコを、
愛情をすごくこめたチョコを、
テオくんには食べて欲しくなかった。
おれはつい、ぼーっとしてた。
教室を出て、
下駄箱へ向かう。
下駄箱に近づくたび、
俺の鼓動は早くなってく。
顔が赤くなるのを隠しながら歩き、
やっと下駄箱にテオくんが手をかけた。
俺はまるで、
自分が作っていないような態度でテオくんに話しかけた。
ホントだね、と、俺はテオくんに笑いかけた。
テオくん、ごめんね。
モテモテで嬉しいよね。
可愛い子、いい子。
たくさんの女子から。
でもね、
その手紙も俺からなんだ。
頑張って女子っぽい字書いたんだよ?
褒めてもらえるわけないのに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。