2人は、どんな一流ホテルのロイヤルスイートルームだって適わないくらい豪華な部屋にいた。
この部屋は王が2人のために用意した城内の部屋。
普段は他国から来た王族や貴族をもてなすための部屋で宿泊用の部屋では無いのだが、今回特別に2人を泊めることにしたらしい。
リンはびっしりと書き込まれたノートを自慢げにショウに見せた。
ショウは少し目を通してリンにノートを返した。
リンはノートを受け取り、『はぁ』とため息をついてから話を始める。
ショウは首を直角に曲げて、目を瞑り上を見あげた。
『うーん…いや……うーん…』と少し唸ってから口を開いた。
ショウは近くにあったワインを一口飲み、長く息を吐いた。
再び『うーん…』と唸りながらショウはワインをグラスに注いだ。
ショウは考えている時にワインを飲むのが癖で、この日はリンが見た中で1番の飲みっぷり。
もうボトルが空いてしまいそうな勢いだ。
リンの不安な声を無視して、ショウは最後のワインをボトルに口をつけて一気に飲み干した。
するとショウは立ち上がり、4つあるうちの1つの個室を覗いた。
そう言ってショウは部屋へと入った。
リンは『やれやれ』と言うようにため息をついた。
ショウは酔うと、リンのことを子供扱いしてくるのだ。
面倒臭い一方で、ショウがリンのことを子供のように思ってくれていると実感出来て嬉しくもある。
明日のことも考えて、リンは急いでバスルームに向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。