緑、黄色、紫、赤…様々な色の液が入った小瓶がトントンと並べられる。
15本ほどのカラフルな瓶を見て、彼は満足げに頷いた。
これがいつもの「始めろ」という合図だ。
リンは頷き返し、早速作業をはじめた。
元のスープの味や見た目を壊さないように慎重に、かつスピーディーに。
彼はストップウォッチを確認しつつ、リンの手元もちらちら見ている。
ボウルにいろんな色の液体を入れて混ぜ、スープに近い色にしていく。
それだけでいいはずなのに、無駄に洒落てる彼はいつも+αを求める。
スープをスプーンですくってみると、確かにスープとは程遠いほどドロっとしている。
ショウは汚いものでも見るかのようにそのスープを遠ざけた。
なにがカラフルカレーだ、とブツブツいいながらリンはスープの入った皿を彼の方へ滑らせた。
スープを受け取って5秒ほど考えたあと、彼はすごい早さで液体を加えていく。
彼は皮肉たっぷりにそう言い切ったあとあなたの方をちらっと見た。
そこまで言って彼はぐっとリンの方へ身を乗り出した。
そう言って、彼はスープをかき混ぜる。
先程よりかなりおいしそうな見た目に仕上がったスープがリンに手渡される。
リンが手を加えたことを感じさせない見事な出来…
綺麗な花で飾り付けられた廊下を歩き、1つの部屋の前でリンは止まった。
ノックをすると、「誰だ?」と男性の声が聞こえた。
いつも通りのセリフを言うとあっさりと扉は開いた。
部屋を出るとショウが前に立っていた。
扉が閉まり、すぐにスープをすする音が聞こえた。
スプーンが床に落ちた音が聞こえた。
男が喉を押さえて苦しむ姿が目に浮かぶ。
暗闇からショウへ札束が手渡された。
依頼主の顔は見えないが、政界の重鎮であることは間違いない。
ショウはその場で札を数え始める。
暗闇からククッと笑い声が聞こえ、その主はすぐに去っていった。
国際的政治家を何人もあの世へ葬り、
その名を世界中に轟かせた。
国際指名手配までされている。
依頼されれば誰でも殺す。
華麗な毒使いで素敵な最後の晩餐を提供する。
誰にも怪しまれることなく、確実にターゲットを仕留める。
殺し損ねたターゲットはこれまで0。
人は皆、彼のことをこう呼ぶ。
今世紀最も美しい毒盛り屋"POISON"
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。