第9話

下見へ🚗
41
2018/06/05 09:04
リン
…ん?
扉が閉まったような大きな音がしてリンは目を覚ました。

目の前には、サイラ伝統の紋様や絵が美しく描かれた高い天井がある。
リン
まだ…寝れるよね……
リンは寝返って窓側を向いた。
鳥の可愛らしい鳴き声が絶えず聞こえて、外は明るい………
リン
いま何時?!
リンは体を起こして壁にかかっている時計を見た……
リン
8時20分…え?!
部屋の中にある洗面所に急いで向かって顔を洗い、服を着替えて自分の部屋から飛び出した。
リン
ショウさん、遅れました!…あれ?
広間にショウの姿はなく、代わりに机の上に紙が置いてある。


『遅い。

8時10分まで待ったが起きなかったから先に朝飯を食べに行く。

場所は裏に書いておく。

起き次第、来るように。

ショウ』


リン
さっきの扉が閉まった音はショウさんが出ていった音だったんだ…
裏には大まかな手書きの地図書かれていて、『ココ↓』と示された部屋は昨日王様と食事を食べた部屋だった。

リンは地図を見ながら部屋を出た。
リン
ここを左…それでここの右側の扉、と。
リンはその一際大きい扉をノックした。
中からどうぞーという声が聞こえ、扉を開けた。
サイラ王
起きたんですね、おはようございます
ショウ
遅いぞ
リン
おはようございます…遅くなりました
2人は昨夜と同じ席に座っていて、リンが座っていた席にはナイフとフォークだけが用意されていた。
サイラ王
さあ、座ってください。
料理は温かいものをすぐ持ってこさせますので。
王がパンパンと控えめに手を叩くと、傍らにいた召使いが一礼して部屋を出た。

するとすぐに召使いが3、4人ほど料理が盛られた皿をリンの前に運んできた。
王が言ったように、どの料理も湯気が立っている。
サイラ王
遠慮なくどんどん食べてください
リン
じゃあ、いただきます!!
皿の料理をモグモグと頬張るリンをショウは不満げに見た。
ショウ
あと5分で全部食べてね
リン
え?あと5分ですか…
ショウ
5分後には出発しないと帰りが遅くなるから。ほらリン、急いで!
リン
ええ?急ぐって…5分で?
その後、リンはぶつぶつ言いながらも猛スピードで皿を次々に平らげていき、見事5分で完食したのだった。






ドタバタと支度を終えて、2人はやっと城を出発した。
ショウ
車借りといて正解だったわぁ
やっぱりボクは天才なんだよなぁ
左のウインカーを出してショウはニヤッと笑う。
助手席のリンはため息でお返しをした。
リン
ショウさん、車借りてまでして今日はどこに行くんです?
ショウ
あ、言うの忘れてた。
サイラ山だよ
リン
サイラ山って、天界の入口がある山ですよね?
ショウ
そう。登ったらどんだけかかるか、そもそも登れるのかとか、いろいろ知りたいからね。
リン
あの絵を見る限り、かなり険しそうな岩山ぽいですよね
リンは昨日王の部屋で見たサイラ山の絵を思い浮かべた。
頂点付近はゴツゴツと切り立った岩肌で、そこを登らない限り頂点には行けない。
ショウ
すっごい低い山だったらいいんだけど、そうもいかないっぽい
ビルの横に大きな山が見えた。
その山は昨日見た絵と全く同じ。
ショウ
とんでもなくでかいんだけど。
これからあれ登るの?!
リン
ショウさんが決めたんじゃないですか!
車が進むにつれて山はどんどん近づき、どんどん大きくなっていく。
ショウ
ほんとにでかいんだけど…ええ…
文句を言ってはいるものの、車はスイスイと『サイラ山▶』という標識に合わせて進めている。
ショウ
確認なんだけど、食料とか水とかいっぱい持ってきた?
リン
ありませんよ、山登りするとか聞いてなかったので
ショウ
じゃあ遭難したら間違いなく死ぬな
リン
えー!勝手に連れてかれて遭難して死ぬなんて嫌ですよー
ショウは楽しそうに小さく笑って車を停めた。
ショウ
まあ、なんとかなるだろう
リン
なんとかなるって言われても安心できないんですけど
ショウ
ほら、行くぞ
リン
ええ……
あんなに怠そうにしていたのに、ショウは軽やかに車から降りていった。


目の前の山は、いくら上を見上げても頂点が見えないほど高かった。

プリ小説オーディオドラマ