扉が閉まったような大きな音がしてリンは目を覚ました。
目の前には、サイラ伝統の紋様や絵が美しく描かれた高い天井がある。
リンは寝返って窓側を向いた。
鳥の可愛らしい鳴き声が絶えず聞こえて、外は明るい………
リンは体を起こして壁にかかっている時計を見た……
部屋の中にある洗面所に急いで向かって顔を洗い、服を着替えて自分の部屋から飛び出した。
広間にショウの姿はなく、代わりに机の上に紙が置いてある。
『遅い。
8時10分まで待ったが起きなかったから先に朝飯を食べに行く。
場所は裏に書いておく。
起き次第、来るように。
ショウ』
裏には大まかな手書きの地図書かれていて、『ココ↓』と示された部屋は昨日王様と食事を食べた部屋だった。
リンは地図を見ながら部屋を出た。
リンはその一際大きい扉をノックした。
中からどうぞーという声が聞こえ、扉を開けた。
2人は昨夜と同じ席に座っていて、リンが座っていた席にはナイフとフォークだけが用意されていた。
王がパンパンと控えめに手を叩くと、傍らにいた召使いが一礼して部屋を出た。
するとすぐに召使いが3、4人ほど料理が盛られた皿をリンの前に運んできた。
王が言ったように、どの料理も湯気が立っている。
皿の料理をモグモグと頬張るリンをショウは不満げに見た。
その後、リンはぶつぶつ言いながらも猛スピードで皿を次々に平らげていき、見事5分で完食したのだった。
ドタバタと支度を終えて、2人はやっと城を出発した。
左のウインカーを出してショウはニヤッと笑う。
助手席のリンはため息でお返しをした。
リンは昨日王の部屋で見たサイラ山の絵を思い浮かべた。
頂点付近はゴツゴツと切り立った岩肌で、そこを登らない限り頂点には行けない。
ビルの横に大きな山が見えた。
その山は昨日見た絵と全く同じ。
車が進むにつれて山はどんどん近づき、どんどん大きくなっていく。
文句を言ってはいるものの、車はスイスイと『サイラ山▶』という標識に合わせて進めている。
ショウは楽しそうに小さく笑って車を停めた。
あんなに怠そうにしていたのに、ショウは軽やかに車から降りていった。
目の前の山は、いくら上を見上げても頂点が見えないほど高かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。