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第19話

これが私の素直な気持ちなんです
───教室に続く廊下を悪魔くんと一緒に歩く。

やけに久しぶりに感じる悪魔くん。
傍にいるだけでドキドキして、嬉しくて、だけど優しくされるだけで泣きたくて。

色んな感情がゴチャゴチャになって私を襲う。
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……静かだと調子狂う
木下あまね
木下あまね
悪魔くんが
黙ってついてこいって……
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……ちっ
木下あまね
木下あまね
あ、悪魔くん……
雰囲気が柔らかくなったって
女の子たちから評判いいみたいだよ
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
は?
木下あまね
木下あまね
女の子、みーんなに
優しくしてるんでしょ?
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
それは語弊があんだろ
勢いよく私を振り返って、その反動で大きく揺れたペンキの缶に「重っ」と顔をしかめる悪魔くん。
木下あまね
木下あまね
ごめんね、持たせちゃって
木下あまね
木下あまね
やっぱり、私も1つ……
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
いい!
俺が好きで持ってんだよ
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
それに、もうすぐそこだし
……もう少し、あと少し。
悪魔くんといられるこの時間がもっともっと続けばいいのにって、非現実的なことを考えていた私に、教室のドアが見えた。
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
これ、中持ってくぞ?
顔だけ振り返った悪魔くんに、 何にも例えがたい切ない感情が襲った。
ギュ〜ッて苦しいのに、不思議と嫌じゃないの。

悪魔くんが私のこと嫌いなのは分かってるけど、それでも、簡単には消えてなくならないこの気持ち。

いっそ、知らなければ幸せだったのかな。
木下あまね
木下あまね
あの、悪魔くん!
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
ん?
木下あまね
木下あまね
……悪魔くん、あの
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
だから、なんだよ
だけど、知ってしまったからには向き合うしかない。自分の気持ちに素直でありたい。

こんな気持ちを抱えたまま、ずっとモヤモヤしてるのは嫌だなって思うから。

せっかく、悪魔くんが教えてくれた気持ちだから。
悪魔くんがくれた気持ちなんだから。
木下あまね
木下あまね
……っ、
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
言いたいことあんなら、
木下あまね
木下あまね
好き!
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……は、
木下あまね
木下あまね
意地悪ばっかりで正直ずっと
苦手だなって思ってたの
木下あまね
木下あまね
いつも自分勝手で、
私は振り回されっぱなしで……
木下あまね
木下あまね
なのに、千冬ちゃんとのプールも
悪魔くんが最近、女子から
人気があるっていう噂も……
木下あまね
木下あまね
全部やだなって……思うの
見つめる先、悪魔くんの両手にはペンキ。
そのまま呆然と私を見ている悪魔くんに、つい、笑ってしまう。
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……なに笑って、
木下あまね
木下あまね
両手にペンキ缶持った悪魔くんに
告白するなんて思ってなかった
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
 ほんと、なんで今なんだよ
木下あまね
木下あまね
悪魔くんとのデートも
お見舞いに来てくれたことも
そのペンキも……
木下あまね
木下あまね
楽しかったし、嬉しかった
木下あまね
木下あまね
私、悪魔くんが、
……羽瀬くんが好きです
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……!!
私の告白に悪魔くんの瞳が大きく揺れた。

驚きすぎて半開きの口から言葉が発せられることはなくて、悪魔くんが今、何を思っているのかなんて分からないけど。
木下あまね
木下あまね
以上です、
ご清聴ありがとうございました
笑いながらペコりと小さく頭を下げれば、私の中のモヤモヤは、綺麗さっぱり消えてなくなった。

こんなに晴れやかな気持ちはいつぶりだろう。

私きっと、ずっと、伝えたかったんだ。
悪魔くんに素直に「好き」ってことを。

悪魔くんが私を好きか嫌いかなんて関係ない。だって、私が悪魔くんを好きなことは変わらないんだから。
木下あまね
木下あまね
じゃ、ペンキありがとう
明日の文化祭、成功するといいね
悪魔くんからペンキの缶を取り返して、ニコリと笑う。
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
待てよ、あまね!
背中を向けて、教室に入ろうとした私を悪魔くんが呼び止めた時───。
クラスメイト
あぁー!!羽瀬くん!
やっと見つけた!
廊下の向こう側からものすごい速さで走ってくるクラスの衣装係。
クラスメイト
探したんだから〜!
もう、どこ行ってたわけ?
クラスメイト
あと衣装合わせしてないの
羽瀬くんだけだから!
はい、早くこっち来て〜
羽瀬 敦人
羽瀬 敦人
……は!?ちょ、今は
クラスメイト
ちなみに羽瀬くんのは
スペシャルデザイン。
頼むよ、クラスの稼ぎ柱〜
抵抗虚しく、悪魔くんは引きずられるように衣装合わせへと連行されてしまった。

その後ろ姿を見つめながら、小さく笑いがこぼれる。頑張れ、クラスの稼ぎ柱!
***

───空は紅く染まって夕暮れを知らせる。
中庭はすっかり紅葉が進んで、秋の顔をしていた。
木下あまね
木下あまね
……やっぱり、ここにいた
江本 夏樹
江本 夏樹
……やっぱ、
ここが1番落ち着く
作業も無事に終わりを迎えて、残すは明日の文化祭を楽しむだけ。

だけど、その前に───。
江本くんに言わなきゃいけないことがある。
木下あまね
木下あまね
猫さん、大きくなったね
江本 夏樹
江本 夏樹
最近は太り気味で重い
木下あまね
木下あまね
アハハ、江本くんが
沢山おやつあげるからだ
江本 夏樹
江本 夏樹
……それも、ある
猫さんのことになると、本当に優しい顔をする。

江本くんは、家がお金持ちなせいでみんなが自分自身を見てくれないって言ってたけど。

最近は、きっとみんな気付き始めてる。
こんなに優しい顔ができる人だってこと。

もっともっとたくさんの人が知ってくれたらいいな。
木下あまね
木下あまね
猫さんは幸せだね
江本くんの優しい顔、独り占めで
江本 夏樹
江本 夏樹
……とか言って、
俺のこと振りに来たんだろ
木下あまね
木下あまね
……っ、江本くんって
本当に鋭いよね
江本 夏樹
江本 夏樹
俺の方が断然いい男なのに
……見る目ないな
フッ、と笑って私の顔をチラリと見たあと、猫さんに視線を移しながら江本くんは呟いた。
木下あまね
木下あまね
お、俺の方が……って?
江本 夏樹
江本 夏樹
羽瀬が好きなんだろ?
───ドキッ
木下あまね
木下あまね
……そ、そこまでお見通しですか
木下あまね
木下あまね
……私、悪魔くんが好き。
だから、江本くんとは友達でいたい
江本 夏樹
江本 夏樹
……お前の答えなんて知ってた
木下あまね
木下あまね
え?
江本 夏樹
江本 夏樹
まぁ、いい。
どうせ俺の方がいい男だって
すぐに気付くだろ
江本 夏樹
江本 夏樹
……アイツが嫌になったら
いつでも俺のところに来ればいい
木下あまね
木下あまね
江本くん……ありがとう
木下あまね
木下あまね
片想いって辛いことの方が多いのに
私なんかを好きになってくれて
本当に、本当にありがとう
江本 夏樹
江本 夏樹
……っ、
もっと伝えたいことは沢山あったのに、いざ江本くんを前にしたら、言いたいことがまとまらなかった。

それでも、優しい顔で話を聞いてくれる江本くんには頭が上がらない。

───ありがとう、江本くん。