第13話

昔話1
850
2021/03/06 06:44
昔々あるところに一人?一匹?の蛇神がいました。
その蛇神の姿を見ると一族共々死に絶えると伝えられており他の神や人間たちはその蛇神に恐怖を抱きました。
蛇神は怯える同胞たちと人間の様子を見て自ら深い山の中で暮らすことを選びました。誰にも見つからないところにいれば無差別に死の呪いをかけることもなくお互いが平和に暮らせるから、とそう言って蛇神は姿をくらましたのです。
しかし同じところでずっとずっと長い年月を過ごすのはとても退屈でした。暇を持て余した蛇神は自分の有り余った神気で分身体の白蛇を生み出し外の世へと放ちました。しかしその白蛇は普通の蛇ではありませんでした。


その白蛇には2本の角が生えていたのです。
それから蛇神は分身体を通して外の世界を見て回りました。山の中に閉じこもってから何百年何千年も経った世界には驚きが沢山ありました…まず一つは他の神が実体化ができないほどに弱っていること、そしてもう一つがまだ赤子のようだった人間が衣食住を完璧にこなす姿に蛇神はとても驚きました。


しかし他の神が弱体化している今、この世界の均衡は蛇神が守らねばなりませんでした。



そんな時、人間が新たな土地に田を耕し始めたのです。

蛇神はそれを止めるために分身体で人間に止めるように注意をしました。しかし人間はそれを聞かずあろうことか蛇神の分身体を駆除しようと殺し始めたのです。


その戦いに敗れた蛇神の分身体達はその土地から追い出されてしまいました。しかし、全滅させられることはありませんでした。


武装した箭括麻多智やはずのまたちはこの夜刀神の群れと戦い、人間の土地から追い払いはしたものの全てを殺すことはしませんでした。


その代わりに山の登り口に境界線を設けて「神の土地」と「人間の土地」とを分けました。
さらに自ら夜刀神分身体を祀まつる祝人ほふりとなり、夜刀神の社を設け、その後も子孫代々その祭祀を継いでいったのです。
その行動に蛇神は驚き、そして感謝しました。

ただ相手と戦い、追放、全滅させて終わりではなく相手に神として接し、社を作り自らがそこを守る箭括麻多智に蛇神は感心したのです。
それから蛇神は約束を守る箭括麻多智を夜刀神を通して見守り、危険が迫った時には助け支えてやりました。
箭括麻多智
君たちの主人は優しい人なんだね
その日箭括麻多智は夜刀神を撫でながらそう呟きました。
箭括麻多智は気づいていたのだ。
身の前にいる白蛇がが分身体のひとつに過ぎないことを、そして願ってしまったのだ…蛇神様に会ってみたい、と。
箭括麻多智の願いに蛇神は首を横に振りました。
蛇神の姿は死そのもの、
見たら最後…一族諸共滅んでしまうのだ。
それから何度も何度も姿を見せて欲しいと言われ続けた蛇神と夜刀神は社から逃げだし元の山奥へと戻ってしまいました。季節は冬になろうとしているのかだいぶ肌寒くなっていました。


視界が何かでぼやけるのを感じながら蛇神は眠りにつきました。頬を流れる暖かい感触を無視して…。

プリ小説オーディオドラマ