第15話

落ちた神
783
2021/03/08 10:03
夜刀神
ん……
ゆっくりと浮上する意識の中でふと目を覚ます。
2泊3日の温泉旅行の帰りの電車に揺られいつの間にか寝落ちてしまったのだろう。肩に重みを感じ横を見ればさしす組が3人揃って寄りかかってきていた。
夜刀神
んふふ…可愛い子たち
2人に寄りかかられて少し寝苦しそうな五条のふわふわとした髪を梳きながら微笑む。
しかしその微笑みはすぐに消えた。
夜刀神
随分懐かしい夢だったなぁ……
夕日が差し込みオレンジ色に光る車内で一人呟く。
夜刀神と名を受けたのは私であってて私ではない。
夜刀神は私から生まれた分身ちゃん達の名前。
じゃあ私は?
夜刀神
九つの首を持った醜い大蛇…名前も可愛くない、だから全部偽った…君たちが好きになったのは私だけど私じゃないんだよ
そう言ったのと同時に最寄りの駅名が聞こえた。
急いで横のさしす組を起こす。
ギリギリセーフで電車をおりて高専への帰路へ着いた。


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五条
五条
あ〜…任務だりぃ〜
家入
家入
それな〜
夏油
夏油
コラコラ…3日も休んだんだからちゃんとやらないと
五条
五条
うげぇ…これだから真面目ちゃんはよォ
休み明けの任務に愚痴をこぼす五条が舌を出して夏油を煽る。夏油もさすがにイラついたのか呪霊を出しそうな雰囲気を醸し出す。
夜刀神
貴様ら!そこまでだ、正道の心労を増やすな!全く、貴様らの子守りは大変だな
五条
五条
いやおま言う?
本当にその通りで、今夜刀神は幼女の形態で家入の腕に抱かれている。しかし夜刀神が言ったこともまた間違っていなかった。中身が5歳のデカい男達よりかは明らかにしっかりしている。
夜刀神
傑も脳内5歳児の煽りにまんまと乗るな!
今日私は引率だからな、特に心配はしていないが特級案件だから一応気を張っておけ
幼女の姿をしているが夜刀神に警告されたさしす組は揃ってこくりと頷いた。


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今思えばこの時ちゃんと夜刀の言っていたことを理解しておくべきだったのだと思う。嫌な汗が流れるのを感じながら五条は目の前にいる呪霊を見る。
明らかに特級、簡単に言えば上の上。
傑には硝子を守るのに全振りさせるとして目の前の呪霊を相手するのは必然的に五条になる。しかし先程から嫌な汗が止まらない。背中に悪寒が走る。
夏油
夏油
悟ッ…
五条
五条
ああ、夜刀と似てる気配…こいつ元は神だ!
明らかに今まで出会ったどんな呪霊よりも強い。
最強と呼ばれる五条と夏油ですら恐怖する。
五条
五条
夜刀に連絡は?
家入
家入
かけたけど無理…電波死んでる
夏油
夏油
電波妨害か…でもこれだけの気配、夜刀なら気づくはずだろう?
そう、落ちてはいるが元は神。
同じ神である夜刀神が気づかないはずがなかった。
しかし夜刀神が来る気配はない、となれば一つ。
五条
五条
結界…バレねぇように細工してやがったんだろ
家入
家入
うっそ〜…ヤバいじゃん
夏油
夏油
ヤバいどころじゃない…
最悪私たち全員ここで死ぬ
それだけの相手なのだ、神は穢れに弱い。
いつか夜刀神が言っていたことを思い出す。
夏油
夏油
でも夜刀のことだ…きっと今頃気づいて何とか結界破ろうとしてるんじゃないかな?
五条
五条
つまり、それまで耐久戦ってこと?
夏油
夏油
そうなるね
ならば信じて待つのみ、夜刀神が来るまで死なずに耐える。最強2人は顔を見合せ頷く。
夏油
夏油
硝子は安全なところで援護!
家入
家入
OK〜!健闘を祈るぞクズ共!
五条
五条
うるせぇ〜…行くぞ傑!
五条は呪力を体に纏う、夏油は使役する呪霊を取り出す。
さぁ、耐久戦と行こうか!

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