ゆっくりと浮上する意識の中でふと目を覚ます。
2泊3日の温泉旅行の帰りの電車に揺られいつの間にか寝落ちてしまったのだろう。肩に重みを感じ横を見ればさしす組が3人揃って寄りかかってきていた。
2人に寄りかかられて少し寝苦しそうな五条のふわふわとした髪を梳きながら微笑む。
しかしその微笑みはすぐに消えた。
夕日が差し込みオレンジ色に光る車内で一人呟く。
夜刀神と名を受けたのは私であってて私ではない。
夜刀神は私から生まれた分身ちゃん達の名前。
じゃあ私は?
そう言ったのと同時に最寄りの駅名が聞こえた。
急いで横のさしす組を起こす。
ギリギリセーフで電車をおりて高専への帰路へ着いた。
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休み明けの任務に愚痴をこぼす五条が舌を出して夏油を煽る。夏油もさすがにイラついたのか呪霊を出しそうな雰囲気を醸し出す。
本当にその通りで、今夜刀神は幼女の形態で家入の腕に抱かれている。しかし夜刀神が言ったこともまた間違っていなかった。中身が5歳のデカい男達よりかは明らかにしっかりしている。
幼女の姿をしているが夜刀神に警告されたさしす組は揃ってこくりと頷いた。
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今思えばこの時ちゃんと夜刀の言っていたことを理解しておくべきだったのだと思う。嫌な汗が流れるのを感じながら五条は目の前にいる呪霊を見る。
明らかに特級、簡単に言えば上の上。
傑には硝子を守るのに全振りさせるとして目の前の呪霊を相手するのは必然的に五条になる。しかし先程から嫌な汗が止まらない。背中に悪寒が走る。
明らかに今まで出会ったどんな呪霊よりも強い。
最強と呼ばれる五条と夏油ですら恐怖する。
そう、落ちてはいるが元は神。
同じ神である夜刀神が気づかないはずがなかった。
しかし夜刀神が来る気配はない、となれば一つ。
それだけの相手なのだ、神は穢れに弱い。
いつか夜刀神が言っていたことを思い出す。
ならば信じて待つのみ、夜刀神が来るまで死なずに耐える。最強2人は顔を見合せ頷く。
五条は呪力を体に纏う、夏油は使役する呪霊を取り出す。
さぁ、耐久戦と行こうか!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。