男の子は、信号が赤だということに気づかずボールを追いかけた。その横には...トラックが男の子の方を向いて勢いよく走ってくる。トラックの運転手も男の子に全く気づいていなかった。このままじや事故に、なってしまう!そう思った瞬間、智くんが私と握っていた手を離し勢いよく道路に飛び出した。それには、トラックの運転手もさすがに気づき
『パッパー!』
と大きくクラクションを鳴らした。智くんは、男の子の背中をドンッ!と叩き男の子を道路の外に出した。男の子は、無事助かった。が、智くんはトラックに当たってしまった。
それが1つ目の災難だった。
私は智くんがトラックにぶつかる瞬間目を閉じた。怖かった。すごくすごく怖かった。おそるおそる目を開けると...智くんが道路に倒れていた。私はすぐに携帯電話を取り出し119番に連絡し救急車を呼んだ。救急車は、すぐに来た。智くんと私は救急車に乗り込み病院へ向かった。
チッ、チッ、チッ、チッ...。時計が秒を刻んでいる。時刻はPM10:12と表されている。智くんは、病院に来てから5時間ずっと手術室に入っている。智くんの両親は、手術室の前のイスに座って待っている。私は...待合室で待っている。私も手術室の前で待ちたい...。智くんのことが心配で心配なのに...。けど手術室に行くと、智くんのお母さんに追い返される。だから、いくら心配でも待合室しか居場所がなかった...。私は、少し薄暗い待合室の長椅子に座って一人でいる。私は、辛くて悲しくて涙が出そうになったそのときに
と私の名前が誰かに呼ばれた。私は呼ばれた方を向いた。そこには...潤くんがいた。
私はもう涙をこらえることができなかった。潤くんはそっと私にハンカチを渡して
と聞かれた。私は
と答えた。潤くんは
と優しく言ってくれた。
潤くんは続けて私に「手術室に行こ?」と誘ってくれた。もちろん私も一緒に行きたい。けど、また追い返されることは分かっていたから
と答えた。潤くんは
と問いかけられた。私は、なんでと言われても...と思いながら
と嘘をついた。潤くんは
と笑って手術室へ向かった。私は
と笑顔で答えた。
第6話に続く...
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。