何で…何で私がこんな目に…!
私はただの世界で平凡な生活を送りたいだけだった。楽しくもなくつまらなくもない。
単純にそれが好きだったのだ。
別にこのゲームで死んだっていいや。
そんなことを思う時もあった。
けど、蘭さんとか及川と出会って私の考えは変わった。
特に昔からでも無い、同じネットのゲームで出会った人達。
蘭さんが電話を切る前に言った言葉。
『綾梨ちゃんが来るまでゴール地点には入らないから!』
最初は言いたいことだけ言ったな…とか思ってしまったが、よく考えてみると、私が着くことが出来なかったら一緒に死ぬと言っていたんだよね…
ナツキが言ってた、終わる人は終わる。
おそらく、これでChinon本社に辿り着いても次のstageが用意されているのだろう。
ここまで来たならやってやる…!
全部、クリアして犯人に謝らせてやる…!
絶対に生き残ってる皆に謝ってもらう…!
あとは…冬稀……
何処にいるの?ちゃんと生きてるよね?
こんな所で死ぬの?
様々なことを考えながら全速力で走り抜ける
ヘッドホンからのカウントダウン。
とにかく走る、足が疲れても止めない。
鬼は追いかけてくるけど、私のスピードにはついてくることが出来なかった。
視界に私に手を振る蘭さんを捕らえた。
隣には及川もいる。
溝を見ると、多数の血痕があり何となくだが橋のような形をしていた。
渡る途中でコケてしまう。
コケたことにより呼吸は乱れ、足の力が抜けもう動けない。震える手でヘッドホンを外す
街の奥の方からChinon本社に向かって段々と爆発が起きていく。
及川がひょいと簡単に私を担ぐ。
そして、蘭さんと私を担ぐ及川が走り出す。
階段は長く300段くらい。
2人はどんどん上がっていく。
おそらく、私が上がるより速いんじゃ…
残り10秒のところで扉に辿り着く。
蘭さんが扉を開け、素早く及川も入ると蘭さんは扉を閉める。すると、扉の向こうで振動が起きた。
及川が私を床に降ろす。
辿り着いた部屋にいたのはナツキ、そして
十数人の男女しかいなかった。
机にはお菓子や飲み物が並べられてる。
3000人以上いたよね…?
まさか、三日間で生き残ったのはたったのこれだけなの…?
……改めて思うけど…ほんと有り得ないよ…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!