今日は、いつもより早く目が覚めた。
昨日の夜は、楽しみすぎてなかなか寝付かれへんくて、やのにこんなに早起き。
今日からみんなで一泊二日の旅行。
体調が良いと言ったって、健康な人基準なら全然良くないわけで、
それでもなんとか、許してもらえた一泊二日。
早く出て、長く旅行しようってことで、まだ外は真っ暗。
みんなが来る前に着替えて、歯磨きして、病室を出たり入ったり。
急に声をかけられて振り向くと、苦笑いの先生。
まだみんな寝てるから、真っ暗な廊下。
先生と二人でメンバーが来るのを待つことにした。
真っ暗やからか、ハイになってるからか、すっと出た感謝の言葉。
まー、感謝されることと言えばいくらでも思いつくけど。
そう笑う先生に、「もー!」と口をふくらます。
リュックをぎゅっと抱きしめて、俯く。
先生が、なんで許可してくれたのかは、大体予想がつく。
その優しさは、
嬉しいんやけど、なんだか残酷で、
素直には受け入れられなくて。
でも、出てくる言葉は、「ありがとう」しかない。
わしゃっと頭を撫でられてそんな声が響く。
笑い交じりに聞くと、「せやで?」って先生も笑う。
先生は、
おとんもおかんも知らへんことを、
俺の体しか知らへんことを、
一人で知ってる。
しばらくの沈黙の後、自然と出た言葉は、ちょっとだけしょっぱかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!