第31話

重岡side
889
2020/06/18 11:31
今日は、いつもより早く目が覚めた。



昨日の夜は、楽しみすぎてなかなか寝付かれへんくて、やのにこんなに早起き。






今日からみんなで一泊二日の旅行。


体調が良いと言ったって、健康な人基準なら全然良くないわけで、

それでもなんとか、許してもらえた一泊二日。






早く出て、長く旅行しようってことで、まだ外は真っ暗。


みんなが来る前に着替えて、歯磨きして、病室を出たり入ったり。





先生
・・大毅君、ちょっと落ち着いたら・・?


急に声をかけられて振り向くと、苦笑いの先生。


重岡
だって、はよ行きたいねんもん


まだみんな寝てるから、真っ暗な廊下。

先生と二人でメンバーが来るのを待つことにした。





重岡
先生、ありがとう




真っ暗やからか、ハイになってるからか、すっと出た感謝の言葉。



先生
なにがや

まー、感謝されることと言えばいくらでも思いつくけど。

そう笑う先生に、「もー!」と口をふくらます。






重岡
・・・今日、遠出の許可してくれて、ほんまありがとう。・・・・・・ずっと行きたかったし。



リュックをぎゅっと抱きしめて、俯く。









先生が、なんで許可してくれたのかは、大体予想がつく。



その優しさは、




嬉しいんやけど、なんだか残酷で、




素直には受け入れられなくて。



でも、出てくる言葉は、「ありがとう」しかない。




先生
楽しんできぃや

わしゃっと頭を撫でられてそんな声が響く。

先生
帰ってきたら、また先生と、病気と、闘わなあかんのやから
重岡
先生とも闘わなあかんの?

笑い交じりに聞くと、「せやで?」って先生も笑う。







先生は、

おとんもおかんも知らへんことを、



俺の体しか知らへんことを、



一人で知ってる。





重岡
・・・ありがと




しばらくの沈黙の後、自然と出た言葉は、ちょっとだけしょっぱかった。

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