コンサートは終盤。
盛り上がる曲では、疲れてしまった俺を、濱ちゃんがずっとおんぶして移動してくれた。
「しげのパートとか位置とか覚えてへんからな」
そう言ってた流星も、ちゃんと俺の立ち位置を覚えてくれてた。
幸せな時間って、なんでこんなあっという間なんやろ。
そんなこと思いながら、最初にステージに出た場所と同じ位置に戻る。
最後のあいさつのコーナーで、一人一人感謝を伝えて、最後は僕の番。
あぁ、どうしよう、
また頭の中真っ白になってもうた。
でも、さっきとは違う。
あふれそうな何かでいっぱいで、
慌ててメンバーを見た。
ああ、違う、メンバー見たんは間違いやった。
こういう時は、上を向かな。
最初の方から涙もろかった照史も、濱ちゃんも、目の周りが赤い。
泣かないって決めてた神ちゃんも、必死に涙を拭ってる。
俺が今ここにいれるのは、
メンバーのおかげ。
ここにいる、みんなのおかげ。
メンバーを見てしまったせいで滲んだ涙を拭って、前を向いて深呼吸した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。