その問いに、一瞬驚いて、言葉を失った。
でも、何故か
そう素直に頷いている自分がいた。
さっきとは変わって笑顔でそう聞いてくるしげに、
一瞬で思い浮かんだあの日のこと。
しげの表情が変わったのを見て、「ごめん」そう言うと、
なんて苦笑する。
もう、何年前の話なんやろう。
しげの悪戯で、いや、しげだけが原因じゃなかったけど、
望が過呼吸になった日のこと。
7人で過ごした日々は、いろんな色で出来ていて、
楽しいことばかりじゃない。
思い出せば、あの頃の記憶だけ、
色は黒くて、
でも、
今はそれも、あたたかい思い出だと言える。
苦笑いしながら言うしげは、
「でも、懐かしい」そう、口元を緩めた。
思い返せば、俺たちの生活の中心はしげで、
俺たちはしげを支えている。
でも、
1番、
きっと1番俺らが支えた相手が、
俺らのことを1番笑顔にしてくれて、
希望になってくれて、
強くしてくれた。
今までなら絶対に言えない言葉を、まっすぐに伝えると、
しげは、
そう言って、くしゃっとえくぼを作って笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。