第10話

濱田side
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2019/03/10 14:29
濱田
しげー、大分寝れた?
夜中の1時、風呂から上がって寝室に行くと、起き上がってスマホを見てたしげに声をかけた。

重岡
・・濱ちゃんか、びっくりした
慌ててスマホを隠すしげに苦笑しながら、隣の布団に入る。
濱田
隠さんでもええで、どうせ俺が寝たらまたするんやろ、振りの練習
そう言うと、てへっと笑う。



重岡
神ちゃん、めっちゃ細かいところまでやってくれてて助かる
布団にもぐりこんでしばらくしたら、しげの声がして顔を向けた。

見せられたムービーは、イヤホンささってて声は聞こえないけど、何かを説明しながら踊ってる神ちゃんが映ってた。

指先の動きまでちゃんと。



重岡
俺さぁ・・・元気になれたらな?
ふと響いた声に、「へ?」と声が出る。

重岡
・・・神ちゃんに振り教えたいわ
笑って言うしげに「なんで?」と聞く。
重岡
やってさ、絶対無理な話やん、俺が教えるとか。

1回でいいから、神ちゃんに「ここはこうやでー!」って教えたい。この際淳太でもいい。淳太覚え悪いから教えるんきつそうやけど。

スマホを置いて、布団にもぐりながらしげが笑う。


俺も笑うと、「今の聞いたら淳太怒るやろうな」って肩を震わせながら笑って、顔を半分隠すように布団をかぶった。







重岡
あとなぁ・・


笑い声もなくなってしんとした部屋に、やわらかなしげの声が響く。





重岡
・・俺、元気になれたら、濱ちゃんの看病するねん


「なんで」そんな言葉は、しげの「ふふっ」って笑い声にかき消される。


濱田
・・俺、風邪ひいてへんけど?

聞こえた自分の声は、びっくりするくらい小さかった。

重岡
うん、せやから風邪ひいてもらうねん


当たり前のように言われて、「いや、おかしいやろ」そうしげの方を向くと、


しげは泣きそうな顔で笑ってた。






重岡
・・・いっつも、助けてくれてありがとう・・・、


元気になれるんやったらさ、濱ちゃんが大変になった時に恩返しできるねんけど。




ー「多分、一生恩返しなんかできひんから」





続けた言葉は、小さくて、震えてた。









重岡
してみたかったな、濱ちゃんの看病。


「おかゆ作ってあげて、食べさせてあげるねん」なんて笑うしげの表情は、暗くてよく分からなくて、



でも、頬を伝った涙は、見逃さなかった。






濱田
ええねんで、恩返しなんか



手を伸ばしてしげの頭を撫でながら、そう言った。






恩返しなんか、しなくていい。


俺は、しげにいっつも助けられてるんやから。


俺の方が恩返ししたいくらいや。






今、しげの方を見たらきっと泣いてしまう。





やから、「ええからはよ寝な」そう言っておもむろにしげと反対方向に寝返りを打った。


溢れ出す涙に、唇を噛む。






重岡
・・・ごめんなぁ・・・




小さく後ろから聞こえた声は、震えてた。








段々と、分かってくる。


毎日一緒にいれば、しげが弱っていくのを、メンバー誰だって分かってる。





しげ、


俺はお前が思ってるほど強くないねん。



しげの言葉を、冷静に受け止められるほど大人じゃない。









しげの寝息が聞こえた頃、涙をぎゅっとぬぐって寝返りを打った。



濱田
・・しげ・・ずっとそばにおってな



ぎゅっと手を握って呟いた声は、まだ涙で震えてた。

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