私は、間違っていたのだろうか。
もう、何もかも分からない。
目の前の光景は何?
何で赤いの?
何で悲鳴が聞こえるの?
ねぇ、嫌だよ?
私を、おいて逝かないで。
数時間前...
キーンコーンカーンコーン
終業のチャイムが鳴る。
私はそう言って「にやり」と笑う。
暮斗はそう言って、呆れた顔をする。
それから私と暮斗は教室を出た。
帰り道...
...え?
あぁ、そのことか。
まだ、心配してくれたんだ...
私はそう言って、笑った。
「ありがと。」
その言葉に私は、沢山の意味を込めた。
守ってくれてありがとう。
心配してくれてありがとう。
一緒にいてくれてありがとう。
他にも、沢山。
暮斗や和人にお礼を言うなら、一生かかっても
終わらない。
それくらい、沢山のものを二人から貰ったから。
暮斗はそう言いながら、笑って、私の頭を
わしゃわしゃと撫でた。
暮斗はそう言って「にかっ」と笑った。
また、「にかっ」と笑った。
何か、幸せだなぁ...
私がそう言うと、暮斗は一瞬考え込んでから
私の頬を優しく摘まんで、
と言った。
ななな何を言ってるんだ⁉暮斗⁉
そんなこと、軽く言っちゃ駄目でしょ⁉
ん?あれ?何か、この展開...
って、そうじゃなくて!
暮斗はそう言って、手を離す。
私はそう言って笑った。
その時だった。
誰かに、背中を押された。
私は、その反動で、横断歩道に飛び出す。
信号は、赤だった。
飛び出してはいけない、色。
キィー!
車のブレーキ音が辺りに鳴り響く。
私、死ぬの...?
突然、温かいものが私を包み込む。
ドン!
車と、衝突した。
...はずなのに。
痛くなかった。
辺りがざわめく中、つぶっていた瞼を上げる。
私は、人の悲鳴、叫び、動揺の声、ざわめき、
全て、聞こえなくなった。
まるで、音の無い世界だった。
ただ、目の前の光景を呆然と見ていた。
目の前で、倒れているのは..暮斗...?
じゃあ、何で...
目の前が赤いの?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!