産屋式邸にて 柱合会議後...
思った通りだ。一つ返事であとは何も返してこない。
一瞬気配が緩んだと思ったが気のせいだとも思えるほど一瞬だった為、よく分からなかった。
よし!乗った!
私は冨岡さんを蝶屋敷の食堂へと案内する。
少し冷めてしまっていた鮭大根を煮詰め直し、盛り付けをし、冨岡さんのもとに配膳した。
精いっぱいの笑顔を向け、反応を伺う
この話をしても食いつかないか。冨岡さんはじぃーっと鮭大根を見つめている。
私は諦めて調理道具の片付けをしようと厨房に戻ろうとし、
そう言いかけた時
虫の羽音のような小さな声でそう言った。
私はビックリして立ち止まってしまった。
光っているような笑顔が冨岡さんの顔にあった。
この笑顔は私の脳裏に張り付いて離れる事は無かった。
こんな時までも。
続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!