私は私の中での最終決戦にいた
五月蝿い。
やめろ
それは、その言葉は、
姉さんに言われたかったのに!
お前なんかに言われて嬉しいものか。
本当に狂っている。
ダンッ!
ごめんねカナヲ。
私はこの時のために自分をも毒にし、食べられても確実に敵にダメージを与えられる方法を選んだ。
姉さんが私にしないで欲しいと言っていた事だった。
でも姉さんと違って腕力がない私はこうでもしないと勝てないと確信してしまった。
ごめんなさい。
ああ。こんな時にまで冨岡さん。あなたの顔が浮かんできます。
なぜでしょうか。
気づけば私はあなたのこと、知りたく、好きになってしまっていたのでしょう。
けれど、鬼に親を惨殺されてからずっと闇雲に刀を振っていたせいか、
恋愛には鈍感でして。
あなたにただ一言、「好き」と言うことができなかった。
あの笑顔。
あなたの落ち着いた声。
もうこの身体で見ること、聴くことが出来ないなんて。
ああ。なんだか名残惜しくなってしまったわ。
覚悟はできていたはずなのにね。
私はカナヲに指文字で、
「勝って」
ただ一つの言葉を遺した。
ただ。カナヲには普通に恋愛をして幸せに生活して欲しい。
この「勝って」は「勝って幸せに暮らして」と言う意味も含まれていること。
やっと姉さんの気持ちがわかったよ。
姉さんも幸せになりたかったんだね。
冨岡さん。
もしも生まれ変われるのならば。
鈍感でよくわからないあなたに
「好き」
と伝えたい。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。