無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第1話

芽衣のジンクス
───チアが好きだ。
みんなで演技を作り上げて、観てくれた人達が笑顔になってくれることが、私の一番の原動力でもある。


私、谷原 芽衣たにはら めい
この春、高校2年生になった。

よく、みんなから"芽衣はいつも笑顔だね"と言われるくらい、私は基本的に笑っているらしい。

確かに、元気なのが取り柄だし。

性格を一言で言い表すなら、"ポジティブ"だと思う。
それに、笑顔は人を幸せにするって信じてるし。
小早川 紬
小早川 紬
芽衣、今度は3組のあやちゃんの
キューピットしたんだって?
放課後、いつものようにカバンに道具をつめる私の元へ、私より先に帰り支度を済ませたらしい親友の小早川 紬こばやかわ つむぎがやって来た。
小早川 紬
小早川 紬
芽衣に応援してもらったおかげで
告白成功したって、彩ちゃん
みんなに報告してるみたいだよ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
そんな、大げさだよ。
私はただ応援しただけで……
谷原 芽衣
谷原 芽衣
告白したのも、告白が成功したのも
彩ちゃんの頑張りのおかげなのに
小早川 紬
小早川 紬
でも、みんなは
そうは思わないんじゃない?
小早川 紬
小早川 紬
これでまた"芽衣ジンクス"を
信じる人が増えるだろうね!
楽しそうにニッと笑って、私を見つめる紬にため息が零れる。

紬の言う"芽衣ジンクス"というのは───。


芽衣に応援された人は”恋が成就する”、”大事な試合に勝利する”、”試験に合格できる”


なーんていう、たまたま私の応援の後に告白に成功したり、試合に勝ったり、試験に合格した友人たちによって広まったもの。

……実際は、私の力なんかじゃないんだけど。
今では学校中に広まったジンクスのせいで、私に応援して欲しい!と訪ねてくる生徒が沢山いる。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
もう!
人ごとだと思って……
小早川 紬
小早川 紬
もはや神業だよね〜
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……バカにしてるでしょ?
こっちは真剣に困ってるのに
小早川 紬
小早川 紬
みーんなを幸せにする力があるんだよ?
すごいことじゃん!
谷原 芽衣
谷原 芽衣
確かに、みんなが幸せなら
……それでいっか〜!
あれこれ悩んでも仕方ないし。
きっと、このジンクスもいつかみんな忘れるだろう。

それに、人を応援することは好きだし。
自分の好きなことをして、その結果、人に喜んで貰えるんだから万々歳なのかも!
***

先に着替えを終えて体育館に向かった紬を追いかけて、廊下を早足で歩く。

そんな私に見えたのは、体育館の入口で話す同じチア部の上西 凛乃うえにし りの先輩と、同じクラスの瀬戸 一聖せと いっせいくんの姿。

……ふたり、知り合いなのかな?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
部活終わったら迎えに来るから
上西 凛乃
上西 凛乃
一聖は心配性すぎだよ
ひとりで帰れるから、来なくていい
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
でも……
上西 凛乃
上西 凛乃
じゃ、一聖も部活がんばってね
体育館の入口近くまで足を進めた私に聞こえた、ふたりの会話。

ヒラヒラと手を振って体育館へと入っていく凛乃先輩を見つめる、切なそうに歪んだ瀬戸くんの顔を見て、気付いてしまった。

───瀬戸くん、凛乃先輩のこと……
谷原 芽衣
谷原 芽衣
好きなの?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……は?
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……っ!あ、
つい、心の声が口をついて出てしまい、慌てて誤魔化そうと言葉を探すけれど、頭は真っ白で何も出てこない。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
だったら?
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……え?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
俺が誰を好きでも
谷原には関係ないだろ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……っ
本当はずっと、密かに瀬戸くんの事が気になってた。

かっこよくて、クールで……だけど、たまにクラスメイトたちと顔をクシャクシャにして笑ってる顔が可愛くて。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
じゃ、俺も部活だから
谷原 芽衣
谷原 芽衣
っ、待って!瀬戸くん……!
───いつか、仲良くなりたい。
そう思ってた。

私に背を向けた瀬戸くんを呼び止めて、振り向いた瀬戸くんを真っ直ぐ見つめる。

そして、ひとつ深呼吸した。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
私に応援してもらった人は、
恋が成就するっていうジンクス
……試してみない?
谷原 芽衣
谷原 芽衣
凛乃先輩との恋、私に応援させて
精一杯の笑顔で伝えれば、瀬戸くんは一瞬、大きく目を見開いた。