第14話
勘違い?
このふたりのやり取りは、毎日 毎日ほのぼのしている。見てて飽きないし、すごく微笑ましいから、ずっと続けばいいのに……って思ってしまうくらい。
紬の可愛さに桔平が落ちる日も近いはずなんだけど、桔平の能天気さもまた、平均を大きく上回っているから……。
このままじゃ、永遠に平行線かもしれない。
***
いつものように紬と別れて、生徒玄関にある自販機でジュースを買う桔平を待つ私。
小さい頃から一緒に育っているだけあって、桔平の隣は居心地がいい。話も弾むし、例え会話がなくても別に気まずくないし。
改めて思うのは、桔平の隣は素の自分でいられるから楽ちんだってこと。
私の呼び掛けに自販機にお金を入れながら、軽く首だけ振り向く桔平。
私の褒め言葉が不服らしい桔平は、ジロッと横目で私を見るけど、桔平に睨まれたって怖くないもんね。
きっと、桔平なら、可愛い女の子から告白される事も少なくないと思うんだ。
それなのに、今まで彼女がいた試しがない。
少しでも紬の気持ちが桔平に伝わる方法がないかと、あれこれ考えてみるけど、良い案が浮かばない……。
それならいっそ───。
ストレートに聞くのが1番なのかも……。
なんて思ったのに、私の言葉に桔平は難しい顔をして、人差し指で自販機のボタンを押した。
───ガタンッと音を立てて、出てきたのは桔平がよく飲んでいるスポーツ飲料水。
そんな桔平の言葉に、呆れて笑ってしまう。
あんまりにも桔平らしい答えだったから。
それに、紬の気持ちは私から伝えるものじゃない。
きっと紬のことだからいつか自分の口から、ビシッと桔平に気持ちを伝えるはずだ。
***
【一聖side】
生徒玄関に、聞き慣れた声と、見慣れた後ろ姿。
それが誰なのか、俺にはすぐに分かった。
水上の姿を見つけた瞬間、正直、「またお前か」と思った。凛乃を迎えに行くと、必ず俺より先に体育館前で谷原を待っていて、毎日決まって一緒に帰っていく。
もしかして……付き合ってんのか?なんて思ってたけど、今の会話からしてそれはなさそうだ。
呆れたようなどこか諦めたような谷原に、どこか不満そうに声を上げる水上。
仲が良いいことなんて、見てわかる。
傍から見たら恋人以上なふたりに、なぜか胸の奥でモヤモヤが広がっていく。
俺たちに気付かず生徒玄関を出ていく谷原に、気付いて欲しいような、気付いて欲しくないような……。
───ひとつ分かったことは、きっと谷原は水上のことが好きなんだってこと。