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第16話

一方通行が苦しくて
───私と瀬戸くんの間を、夏の夕暮れの生ぬるい風が吹き抜ける。

並んで歩いているとは言え、お互いの間に人一人分ほどの距離があって、私にはそれが心の距離みたいに思えて、ちょっとだけ切ない。

しばらくは、なんてことない話をしながら歩いて、すぐに沈黙……。

桔平の時とは違って、「なにか話さなきゃ」と必死に頭の中で話題を探している。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……凛乃先輩、元気?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
あぁ、元気だよ。
楽しいキャンパスライフのために
今は嫌いな勉強頑張るってさ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
そっかぁ……部活引退してから
変わらず同じ学校にいるのに
思ってたより全然会えなくて
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
凛乃も言ってた。
"芽衣の笑顔が恋しい"って
凛乃先輩の言葉だと分かりつつも、瀬戸くんの口から出た「芽衣」に、心臓がドキッと音を立てた。

頬は燃えるように熱くて、きっと耳まで赤い。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
そっか……。
引退してからも、
忘れずにいてくれて嬉しいな
熱をもつ頬を手で扇ぎながら「それにしても暑いね〜」と誤魔化す私に、瀬戸くんも同じく手で扇ぎながら頷いてくれる。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……急にこんなこと聞くのも
どうかと思ったんだけどさ
私の顔をチラッと確認して、またすぐに前を見すえる瀬戸くん。
谷原 芽衣
谷原 芽衣
うん?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原といつも一緒に帰ってるヤツ、
隣のクラスの、水上 桔平だっけ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
あ、うん!
瀬戸くん、桔平のこと知ってるんだね
瀬戸くんは野球部、桔平はサッカー部。
おまけに隣のクラスじゃ、元々知り合いでもない限り特別接点もない。

桔平からも特に瀬戸くんの話は聞かないし、瀬戸くんも桔平のことなんて知らないとばかり思ってたのに。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
まぁ、水上人気あるから。
色々と噂には聞いてた
谷原 芽衣
谷原 芽衣
へぇ〜!確かにあれでいて
桔平って結構モテるんだよなぁ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
でも、
瀬戸くんだってモテるでしょ?
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
……俺は、
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……あ、そっか。
凛乃先輩がいるもんね
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
そうじゃなくて、別にモテない。
多分、近寄り難いんだと思う
自分でも自覚してるし
そう言って、フッと笑った瀬戸くんは「だから、」と続けて私を見る。

その優しい瞳に、思わず勘違いしてしまいそうになるくらい。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
俺とこんな風に話したり
一緒に帰ってくれんのは
多分、谷原だけ
───ドキッ
谷原 芽衣
谷原 芽衣
り、凛乃先輩だっているよ
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
まぁ。
でも、凛乃は昔から俺を知ってるから
一緒にいるのが当たり前になってるけど
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原は、そうじゃない。
……それでも一緒にいてくれる
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……っ、
やだな、もう。

優しい目で、そんな優しいこと言われたら……勘違いするなって言う方が難しい。

───なのに、
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原は、水上のことが好きなの?
谷原 芽衣
谷原 芽衣
……えっ?ち、違っ!
やっぱり、恋というのは、自分が思う以上に上手くはいかないものらしい。
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
この間、水上と話してるの
たまたま聞こえてさ
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原、水上に好きな人がいるのか
気にしてるみたいだったから
谷原 芽衣
谷原 芽衣
そ、それは、
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
今度は俺が応援する
谷原 芽衣
谷原 芽衣
っ、
瀬戸 一聖
瀬戸 一聖
谷原が俺を応援してくれたみたいに
俺にも、谷原のこと応援させて
好きな人に、他の人との恋を応援されることが……こんなに悲しくて、こんなに切なくて、こんなに苦しいなんて思いもしなかった。

私が桔平を想ってたって、瀬戸くんにとってはどうでも良くて、仮に桔平以外を想ってたって、瀬戸くんにとっては……。

そこまで考えて、考えることをやめた。
自分の中で、辛すぎる答えが出てしまったから。

───私は、瀬戸くんにとって恋愛対象外。