第4話

第4話 2回目の学園祭7日前
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2019/05/08 09:01
学園祭が終わった夜だったはずなのに、気が付いたら学園祭一週間前の朝だった。
頭の中で状況を言葉にしてみるけど、わけわからない。
長い夢を見ていたのかな……。

とにかく朝だから学校へ行く。
そして1時限目、2時限目と過ごすうちに、どんどんこわくなってきた。
だって……授業の内容、聞き覚えがあるんだもん。

『時間を戻してよ!』

学園祭の後……思い出すとちょっと恥ずかしくなるけど、私は確かにそう叫んだ。
まさか、まさかまさか、本当に時間が戻ったの!?

いろいろ考えているうちに、気が付いたら授業が終わって放課後になっていた。
後輩
先輩。今日、学園祭実行委員はお休みだそうですよ
同じ委員会の後輩が、教室を訪ねてきてそう言った。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
もしかして、委員長と副委員長がふたりとも風邪ひいた……とか?
後輩
なんだぁ。もう知ってたんですね。
そうなんですよ。委員長、心配ですよね……
一条先輩にも今日はお休みだって伝えてくださいね、と言い残して、後輩は教室を出て行った。

やっぱり、私はこの日のことを全部知ってる。
心臓がバクバクして、頭がふわふわする。
私は風にあたるために窓際に立ち、校庭で準備運動をするサッカー部をぼーっと眺めていた。
一条朔也
一条朔也
倉野!
隣に、一条くんがやって来た。
私、彼が次に言う言葉がわかる。
一条朔也
一条朔也
今日って委員会ないんだって?
倉野瑞穂
倉野瑞穂
うん。委員長も副委員長もカゼなんだって
一条朔也
一条朔也
まあ、準備はかなり順調だし、なんとかなるよね
倉野瑞穂
倉野瑞穂
そうだね。今年は準備が早くて優秀だって先生が言ってたよ
まるで台本を読むように、自分が“言う予定”と思われるセリフを並べていく。



ふと、私は気が付いた。
本当に時間が戻ったのだとしても、すごく正確な正夢を見たのだとしても……。
これから起こることを知っているということは……。
大沢さんと一条くんが付き合うのを止めて、私が一条くんと付き合えるかもしれない……?



その可能性に気が付いた私は、ゾクッと背筋に寒気が走った。
本当にそれができるなら……私、失恋しないで済むかも……!
一条朔也
一条朔也
そうだ、おもしろい新刊出てるかもしれないから本屋寄ろうよ
私が知っているとおり、一条くんは本屋さんに誘ってくれた。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
うん、行こう!
一条くんと肩を並べて教室を出る。
私は意識して、私が知っているこの場面よりも一歩、彼との距離を縮めた。

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