第6話

第6話 2回目の学園祭当日
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2019/05/22 09:01
私にとっては2回目の学園祭当日。
ゆうべのうちにクラスメイトに電話をかけ、本来はお昼ごろだったはずのわたあめ屋の店番を、朝イチにしておいた。
一条朔也
一条朔也
うーん、さすがに朝イチからわたあめを食べようっていう人はあまりいないみたいだ
交代したことで、私と一条くんは同じ時間の店番になれた。
その一条くんは、ヒマそうに背伸びをしている。
飲食店コーナーが本気を出すのは、きっとお昼からだろうな。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
一条くんは、店番が終わったらどうするの?
一条朔也
一条朔也
決めてないよ。
ほかのクラスの友だちも店番とかバンドとかで忙しそうでさ
倉野瑞穂
倉野瑞穂
だったら……美術部の作品展に行かない?
美術部さんごめんなさい。私、本当は絵のことぜんぜんわかりません。
でも、一条くんを誘うのにカッコつけちゃった。
一条朔也
一条朔也
いいね!
ちょうど見たいと思ってたんだ
さすがは一条くん。私みたいに無理しなくても、絵画に興味があるんだね。

私と一条くんはきっちり1時間の店番を終えて、次の当番に引き継ぎをした。
そして、美術部の絵画や文芸部の小説、後輩のクラスのおばけやしきをふたりで楽しんだ。
一条朔也
一条朔也
よかった。全部、ちゃんとうまくいってる
倉野瑞穂
倉野瑞穂
本当に……うれしいね
実行委員として、いろんなチームがぎりぎりまで頑張っているのを見てきた。
成功を見ると、やっぱりこみ上げてくるものがある。

やがて日が傾き、校庭では後夜祭の準備が始まった。
校庭の真ん中にくみ上げられたキャンプファイヤーが、着火の時を待っている。
そして私たちも校庭の隅で、着火を待っていた。
一条朔也
一条朔也
倉野、ありがとう
倉野瑞穂
倉野瑞穂
えっ、ど、どうして?
突然の言葉に、おどろいて声がうわずっちゃった……。
一条朔也
一条朔也
倉野と実行委員をやってすごく楽しかったし、助かった
倉野瑞穂
倉野瑞穂
それはこっちのセリフだよ
倉野瑞穂
倉野瑞穂
一条くんと一緒じゃなかったら……うまくできなかった
委員長がマイクを持って、朝礼台に上がった。
キャンプファイヤーが始まるんだ。
私は、覚悟を決めた。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
一条くん
一条朔也
一条朔也
ん、なに?
心臓がドキドキしているのかすら、もうわからない。
気を付けていないと、意識がどこかに飛んでいきそう。
でも……今しかない。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
私、一条くんのことが、好き、です
一条朔也
一条朔也
……えっ
倉野瑞穂
倉野瑞穂
私と付き合ってもらえませんかっ!
言った!
言い切った!

そして、言い切ってから不安になった。

この場にいるのを大沢さんと交代しただけで、私の告白がうまくいく保証なんてどこにもないじゃない!
言い終わってから気が付くなんて……。
……断られたらどうしよう。
そしたら、何度やり直しても無理ってことだよね。



永遠のような数秒の後……。
一条朔也
一条朔也
こちらこそ、よろしく
一条くんの手が、私の手に触れる。
反射的に一条くんの顔を見上げた、そのとき……。
委員長
3、2、1……点火!
キャンプファイヤーがオレンジ色に燃え上がった。
照らし出された一条くんの顔は、とってもやさしい。


ふと、視界の隅に、こちらに視線を向けている人がいることに気が付いた。
あれは……大沢さんだ。
どこかさみしそうに……私たちから視線を外して、キャンプファイヤーを見ていた。


私の“時”はようやく、学園祭の次の日へと進んだ。

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