第2話

指先が触れるだけで
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2021/03/08 16:36
「アサヒ!この練習終わったら俺の部屋来てよ」



いつものように明るい優しい笑顔でジェヒョクが俺に話しかける



「わかった」



俺は無表情で素っ気なく返す




それに対してもジェヒョクは笑顔で返事をする






無表情で
素っ気なくて
何を考えているのかわからない




今までそんなようなことを幾度となく言われて来た
そのせいで俺を受け入れてくれる人は少ない









でもジェヒョクは
受け入れてくれる人の中でも、特別な存在








ずっと





ずっと一緒にいたいって思えるような人だ
















練習後、2人でジェヒョクの部屋に向かう





2人きりのこの短い時間でさえも
俺にとっては大切だ


近い距離で
ジェヒョクの横顔や仕草を見ることができる
特権とも言える








「今日の練習ほんっと〜に疲れたよね!
 俺まだみんなより覚えが良くないから大変
 だよ」


「大丈夫だろ。誰よりも一生懸命やってるし、
 ジェヒョクは何より表情管理ができるから
 それだけで上手く見える。
 俺には真似できない良い所ばっかりだ」




「アサヒ〜!!やっぱりアサヒは俺の親友だ!
 ありがと〜!」





ジェヒョクがとても幸せそうな顔をする


他人の幸せが自分の幸せだと思える日が来るなんて、本当に奇跡のようなことだ









たわいもないことだが会話に熱中して距離が近くなっていたようで





ジェヒョクの指先が
俺の指先に触れる








「わ、ごめん指当たっちゃったね」



「い、いや全然いいよ」









ジェヒョクの男らしいが、長く綺麗な指が少し触れただけで動揺してしまう





これで動揺するなんて
ジェヒョクの事を想い過ぎているのか





















俺は何を思ったのか
反射、だったのか
ジェヒョクの指と俺の指を

絡めた




ゆっくりと、ゆっくりと












「アサヒ?どうしたの?
 アサヒから手を繋いで来るなんて...」


「...ジェヒョク」


「??...うん、早く部屋に行こうか
 なんでも俺に話してね」













ジェヒョク、ごめんな
俺がお前に変な感情を持っているから
戸惑わせているかもしれない












それから部屋までの2人きりの時間は沈黙だった












ただし、指は絡めたままで
 






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