第6話

No.6
15,415
2021/07/01 03:53
あなた

だよね...やっぱり、








そう言って、私はそっ、と彼の腹筋から手を離す。







あなた

ご、ごめんね爆豪くん!困らせちゃって...








困らせたくなくて、無理矢理笑ってそう言う。





それと同時に、言わなければよかったと後悔する。





きっと心のどこかで期待してたんだ。





爆豪くんは照れ屋なだけで、二人の時はちゃんと言ってくれるんだ、って。





間違ってたのかな、やっぱり。







あなた

ごめん爆豪くん、私眠いから、もう部屋戻るね








なんだか無性に悲しくなって、それを誤魔化すためにそう言って彼に背を向け、部屋を出ようとする。





が、







爆豪勝己
待てや







爆豪くんが、私の腕を掴んだ。







あなた

な、なに?








そう言って振り返ったのがいけなかった。





爆豪くんは私の表情を見てぴしりとかたまり、腕を掴んだまま口を開く。







爆豪勝己
...なに泣きそうな顔しとんだ
あなた

っ、だって、爆豪くんが








好きって言ってくれないから。





そう言うと、爆豪くんはため息をつく。







爆豪勝己
なにが不安なんだよ







そう言われ、私は思わず爆豪くんを軽く睨めつけた。







あなた

不安だよ。だって爆豪くん、愛情表現どころか好きなんてひと言も...








私の言葉は、途中で途切れた。





急に爆豪くんが私の腕を引っ張り、自分の方へと私を抱き寄せたからだ。





驚いている私の背中に腕をまわし、ぎゅう、と痛くなるくらい強く抱きしめてくる。







あなた

え、ばく...

爆豪勝己
アホ







ぽん、と頭の上になにかが置かれる。





爆豪くんの手だ。







爆豪勝己
好きじゃねえやつと付き合うバカがいるかよ
あなた

...

爆豪勝己
...俺だっててめぇしかいねえんだわ
あなた








驚きのあまり思わず顔を軽く上げると、「見んじゃねえ」と言われて元の位置に戻される。





...なんだ、そうだったんだ。





爆豪くんは私のこと、ちゃんと好きでいてくれてるんだね。







あなた

ごめんね、爆豪くん

爆豪勝己
あ?なにがだよ
あなた

爆豪くんはこんなに思ってくれてるのに、私、不安とか言っちゃって...

爆豪勝己
...謝ってんじゃねえよ。不安にさせたんは俺も悪かった







思わず背中に腕を回すと、爆豪くんは私を抱きしめる腕の力を強める。





期待以上の言葉に驚きもしたけど、素直に言ってよかったな。





私は心の中で、瀬呂くんたちに深く感謝した。

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