そう言って、私はそっ、と彼の腹筋から手を離す。
困らせたくなくて、無理矢理笑ってそう言う。
それと同時に、言わなければよかったと後悔する。
きっと心のどこかで期待してたんだ。
爆豪くんは照れ屋なだけで、二人の時はちゃんと言ってくれるんだ、って。
間違ってたのかな、やっぱり。
なんだか無性に悲しくなって、それを誤魔化すためにそう言って彼に背を向け、部屋を出ようとする。
が、
爆豪くんが、私の腕を掴んだ。
そう言って振り返ったのがいけなかった。
爆豪くんは私の表情を見てぴしりとかたまり、腕を掴んだまま口を開く。
好きって言ってくれないから。
そう言うと、爆豪くんはため息をつく。
そう言われ、私は思わず爆豪くんを軽く睨めつけた。
私の言葉は、途中で途切れた。
急に爆豪くんが私の腕を引っ張り、自分の方へと私を抱き寄せたからだ。
驚いている私の背中に腕をまわし、ぎゅう、と痛くなるくらい強く抱きしめてくる。
ぽん、と頭の上になにかが置かれる。
爆豪くんの手だ。
驚きのあまり思わず顔を軽く上げると、「見んじゃねえ」と言われて元の位置に戻される。
...なんだ、そうだったんだ。
爆豪くんは私のこと、ちゃんと好きでいてくれてるんだね。
思わず背中に腕を回すと、爆豪くんは私を抱きしめる腕の力を強める。
期待以上の言葉に驚きもしたけど、素直に言ってよかったな。
私は心の中で、瀬呂くんたちに深く感謝した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。