あれからペンギンやイルカショーなどを見て、いつの間にかお昼になっていた。
私たちは館内にあるフードコートに移動して、昼食をとることにする。
椅子に座って待っていると、勝己くんがハンバーガーやらポテトやらを運んでくる。
ばりばりファストフードだけど、いいよね。
太っちゃったら運動すればいいんだし。
...この甘い考えがダメなんだろうけど。
勝己くんはハンバーガーの包装紙を丁寧に開けると、がぶりと豪快にかぶりついた。
ガサツに見えて、実はすごく繊細で丁寧なんだよね。
相変わらず口は態度も大きさもデカいけど。
なんでバレるのさ。
私は彼から目を逸らして、誤魔化そうとするかのようにハンバーガーにかぶりつく。
と、
そう言って、勝己くんはおかしそうに笑った。
仕方ないじゃん。
ポテトを口の中に突っ込まれ、仕方なくもごもごと口を動かす。
と、
突然、勝己くんが私の方に身を乗り出してきた。
え、なに?
そう言われたかと思えば、彼の右手が私の顎に触れる。
え、え?
なにするの?
彼の顔が、だんだんこちらへと近づいてくる。
思わずぎゅっ、と目を瞑った。
が、
その声と同時に、手が離れていく。
あれ?
不思議に思いながら目を開けると、勝己くんがこちらを見つめていた。
そう言いながら、指先を見せてくる。
彼の指先についていたのは、ケチャップ。
さっきハンバーガー食べた時についちゃったのかも。
そう言いながら、彼は指先についたケチャップをぺろりと舐める。
か、関節キ...っ、いや、やめとこう。
ふるふると首を振っている私を見て、彼はニヤリと笑う。
図星をさされ、ぶわっ、と顔が赤くなるのがわかる。
勝己くんはそんな私を見て、再びおかしそうに笑ったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。