スマホを見ていた勝己くんが、そう言って私を見つめる。
そんなに顔に出てたかな。
そう思いながら思わず両頬に手を当てると、爆豪くんは軽く笑った。
言えるわけない。
勝己くんとのお出かけが楽しみ、だなんて。
だって、言ったら勝己くん、絶対からかってくるんだもの。
意地悪だからね。
なんでバレた...。
勝己くんは私の反応を見ると、我慢できないといったように大爆笑。
涙が出るほど笑ったあと、勝己くんはむくれている私を見つめる。
その表情を見て、自然と胸が高鳴っていく。
彼は2人の時だけに見せる、優しい表情をしていた。
そう言いながら頭を撫でてくる彼を見て、思わず瞬きを繰り返す。
急にどうしたんだろ。
こちらを見つめる彼の赤い瞳は、少し不安げな光を瞬いて揺れていた。
そんな彼にふっ、と微笑み、私は口を開く。
彼は優しい。
周りからはヴィラン顔だとか、怖いだとか言われているけど、ほんとはとっても優しい人なんだ。
そう言って笑いかけると、勝己くんは目を見開いてかたまる。
と思ったら、急に私を自分の方へと引き寄せ、抱きしめてきた。
え、え、っ!?
勝己くんが急にこんなことしてくるの、珍しい...。
突然のことに驚きを隠せずにいると、勝己くんはぼそりと呟いた。
わけがわからないまま咄嗟に返事をすると、勝己くんはぎゅうぎゅうとさらに私を強く抱きしめてくる。
よくわかんないけど、まあいっか。
2人で出かけるの楽しみだなぁ。
そんなことを思いながら、私は彼の背中に腕をまわした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!