現在、私の部屋。
なぜか帰ってきて早々部屋に連行され、女子たちに詰め寄られている。
今の芦戸ちゃんの発言からして、たぶん今日のデートの感想を聞きたいのだろう。
だからみんなは勝己くんをなんだと思ってるのさ。
私の言葉を聞いて、みんなが「おお〜」と声を上げる。
芦戸ちゃんがうっとりとした様子で口を開く。
みんながその言葉に勢いよく頷く。
まあ、その点に関しては確かに意外だったかな。
そう言った私の脳内に浮かんできたのは、先程彼と交わしたファーストキス。
かあっ、と顔が熱くなり、じわじわと赤くなっていっていることがわかる。
私の反応を見て、みんなは一斉に色めきたつ。
まあ、自分でもその気持ちはわかるよ、まずこんな反応じゃだいたいなにがあったかわかっちゃうよね。
その続きを言う前に、私はぴたりと口を閉ざした。
言葉にするのが、少しだけ恥ずかしかったからだ。
みんなはキラキラとした瞳で、私の次の言葉を待っている。
言うしかないのかぁ。
私の言葉を聞くと、辺りは一瞬、しん、と静まり返る。
と思ったら、「きゃー!」と全員が声を上げた。
今の3人を含め、耳郎ちゃん、梅雨ちゃん、八百万さんも。
梅雨ちゃんと八百万さん、こんな反応すること滅多にないのにね。
うーん、恋バナってすごい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!