第18話

No.18
10,296
2021/07/31 03:37
2人で駅まで歩き、電車に乗る。





目的地がどこかは言われてないけど、結局どこ行くんだろ。





というか、人が多すぎる...。





なんて思っていたら、電車が大きく揺れた。





その反動で周りの人たちにぶつかり、思わずよろける。





が、







爆豪勝己
...







咄嗟に勝己くんが腕を伸ばしてきて、無言で私を抱きとめてくれる。





こんな狭い中でこんな体勢、迷惑だよね?







あなた

ご、ごめん勝己くん。今退くから...

爆豪勝己
アホか。この状況で下手に動いたらまたよろけんだろーが
あなた

でも...

爆豪勝己
いいからてめぇは黙ってこうされてろ







そう言って、勝己くんは私を抱きしめて、くるりと人混みに背を向ける。





わざわざ人混みにのまれないようにしてくれるんだ...。







あなた

勝己くん、ありがとね

爆豪勝己
...おぉ







お礼を言うと、勝己くんは小さく呟いて軽く頭を撫でてくる。





彼は電車を降りるまで、私が人混みにのまれないように守ってくれていた。









***









爆豪勝己
少し歩くぞ







電車を降りて駅から出たあと、勝己くんがそう言って私を見る。







あなた

結局どこに行くの?

爆豪勝己
着けばわかる
あなた

えー








もう教えてくれたっていいじゃん。





思わずぷっ、と頬を膨らませると、勝己くんは小さなため息をついて頭をかく。





それから、なにかをポケットから取り出して私に差し出してきた。







あなた

なに?これ

爆豪勝己
見りゃわかんだろ
あなた

...水族館のチケット?

爆豪勝己
おう







彼が差し出してきたのは、2枚の水族館のチケットだった。





イルカやペンギンなどの、いろんな動物たちの写真が貼られている。







爆豪勝己
前にテメェ、行きたい言っとったろが
あなた








かなり前に、自分が言ったことを思い出した。





女子トークで盛り上がっている中で、誰かが言ったんだ。





「デートするならどこに行きたい?」と。





そこでふいに出てきたのが、水族館だった。





周りには男子たちもいて、その中には勝己くんもいたんだけど、まさか聞いてたとは...。






あなた

...あの時の会話、聞いてたんだね

爆豪勝己
あんだけデケェ声で言っとったら嫌でも聞こえるわ







まあ、そうだろうね。




でも、かなり前のことを、しかもたったひと言を覚えていてくれたことが嬉しかった。







爆豪勝己
なにニヤついとんだ
あなた

えへへ、なんか嬉しくってさ

爆豪勝己
なにが?
あなた

勝己くんが、私の言ったこと覚えててくれたから








そう言って、私は彼の方を見て笑った。







あなた

私、すっごく嬉しいよ








そう言った私を見て、勝己くんは少し頬を赤く染めて顔をそらした。

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