先程のことについて聞いてみる。
勝己くんは私から目をそらし、ガシガシと頭をかく。
と、
私に向かって紙袋を渡してきた。
わけがわからないまま紙袋を受け取り、なにが入っているのかを確かめるために中を覗く。
その中に入っていたものを見て、私は目を見開いた。
紙袋に入っていたもの。
それは、先程売店で私が見ていた、大きなペンギンのぬいぐるみだったのだ。
そんなにしてたかなぁ。
私、表情に出やすいのかな。
そう言うと、ふいっ、と私から顔をそらしてしまう。
でもこれは、彼なりの照れ隠しだ。
私はそう言って、紙袋ごとぬいぐるみを抱きしめる。
嬉しくてたまらない。
彼が私を思ってくれた、ってことだもの。
それにこれは、彼からの初めてのプレゼントだ。
そう答える彼の耳が、赤くなっていることに気づく。
思わず笑った。
そう言う彼だけど、口元は緩んでいた。
と、
突然、名前を呼ばれる。
どうしたのと尋ねる前に、彼が先に口を開く。
急にどうしたんだろ。
疑問に思いながらも、私は言われた通り目を閉じる。
その時だった。
私の後頭部に優しく手が回され、ぐいっ、と引き寄せられる。
瞬間、ふにっ、とした柔らかな感触が唇に伝わった。
驚いて目を開く。
目を開けて真っ先に視界に飛び込んできたのは、目を閉じている勝己くんの顔のドアップ。
まつ毛長いな...じゃなくて!
え、え!?
こ、これ、キス...!?
唇を離すと、彼はそう言っておかしそうに笑う。
それから驚きと羞恥で顔を真っ赤にさせている私の耳元に唇を寄せると、私に聞こえるくらいの音量で囁いた。
そのひと言で、私がキャパオーバーを起こしかけたのは言うまでもない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。